【EVの聴覚体験を広げる】アウディeトロンGT 助手席試乗 新型スポーツサルーン
公開 : 2020.10.16 10:20 更新 : 2021.11.11 13:20
車内で聞く音はアイデンティティの1つ
アウディeトロンGTは、プラットフォームをポルシェ・タイカンと共有する。しかしサウンドはオリジナル。別の開発チームが生み出している。シュツットガルトのノートは、盗み見しなかったらしい。
近年登場する純EVの中で、eトロンGTは最も積極的に聴覚体験へ向き合ったモデルになるかもしれない。停止状態でも、低周波の調和の取れたハミングが聞こえてくる。もちろん、直列6気筒エンジンのアイドリング音とは違う。
リア側のスピーカーからは、猫よけに使われるような、静かな高周波音が響いている。
運転席で聞こえる音は、さらに重要だ。「車内で聞く音は、クルマのアイデンティティの核にもなる部分。特にスポーツカーの場合は、サウンド面での充足感は重要な要素です」。と話すグセル。
彼の考え方には、筆者も同意する。主力車種となるような純EVなら、静けさも大事だろう。だがスポーツカーの場合、エンジンサウンドは高速走行時のシャシーバランスやステアリングフィールと同じくらい、個性を主張する部分だと思う。
純EVに載るのは、バッテリーと電気モーター。まったく異なるアプローチが必要なのだ。
グセルが筆者を助手席に乗せて、最も高効率なドライブ・モードでeトロンGTをスタートさせる。一番静かなモードだが、複数の音が折り重なった特長的な音が聞こえてくる。速度が増すと同時に、音程が上がっていく。
最速版のRSも同時に発表予定
コンフォート・モードにすると、リアドア側のスピーカーからも音が出る。低音が強調され、やや刺激も増える。ダイナミック・モードではさらに増し、アクセル操作に合わせて複数の周波数の音が折り重なって響く。
スピードメーターの数字が大きくなるほど、聴覚的に、ドライビング体験の感覚が広がる。ただしR8のV型10気筒や、RS3の5気筒ターボほど、背筋がゾクゾクするような刺激はない。
eトロンGTのサウンドは、単調になりがちな高性能EVの体験を広げてくれる。しかもこのクルマは、最速の純EVの1つにもなるだろう。
ドライブトレインの構成は、教えてもらえなかった。ちなみにeトロンGTコンセプトでは、ツイン・モーターで590psだった。最速版はトリプル・モーターになるらしい。タイカン・ターボを運転した経験と比べても、eトロンGTの加速は引けを取らない。
標準のeトロンGTに加えて、RS版も登場する。発表は通常のモデルと同じタイミングで、利益率の高い最速版はビジネスを強く牽引することになる。
今回は助手席での試乗だったが、タイカンとは異なり、eトロンGTはまだトラクション的な課題を抱えているようだった。タイトコーナーへの侵入が速すぎると、ひどいアンダーステアを出していた。高速コーナーでも、タイヤはいうことを聞いていないようだった。
グセルによれば、ダイナミクス面はまだ完全には仕上がっていないらしい。スタビリティ・コントロールの介入もなかったようだから、理解できる。今後に期待しよう。