【5か月だけの豪華仕様】シトロエン2CV AZAMエキスポート ルノーR4に対抗 前編
公開 : 2020.10.25 07:20 更新 : 2021.03.05 21:42
アミ6用のパーツを上手に活用
エンジンはしばらく425ccのままだったが、1965年1月にアミ6用の602ccエンジンを搭載したAZAM 6が登場。製造はベルギー工場で行われ、電装系は12Vへ電圧が高められた。スペイン工場でも同様の仕様で2CVの生産が開始。1972年まで続いた。
そして、1967年4月に登場したのが、今回の主役でもあるAZAMエクスポート。車内にはアミ6用のメーターパネルを装備し、ノブやボタン、ステアリングホイール、シフトノブはブラックで統一された。
ボディ周りでは、フランス製2CVとしては初めて、フロントフェンダー上にウインカーを配置。アミ6クラブ仕様にも用いられた、ガラと呼ばれるプラスティック製のホイールキャップを採用している。それ以外は、基本的には標準のAZAMと変わらない。
豪華仕様のシトロエン2CV AZAMエクスポートといっても、実際はメーカーの小手先に近かった。華やかな装飾が加えられても、見た目に大きな違いは生まれなかった。
標準の2CVに装備されるハンモック状のシートも、完璧といいたくなるほど快適。等速ジョイントも、通常の2CVにオプションとして装備することは可能だった。内容を知ってか、当時のメディアは特に注目しなかった。
6ライト・ボディになったAZAMの試乗レポートでは、取り立てて紹介するほどの拡張モデルではないと評価される。1960年代末には、2CVは仕上げが悪く、動的性能は低く、運転を楽しめないクルマになっていた。手を加えるのも、限界だったといえる。
ディアーヌと2CVのコンビ体制
ところが、市民の反応は少し違った。多少の価格上昇にもめげず、根強いファンが2CVの売上を支えた。1967年、アミ6を除くシトロエン2CVシリーズは、20万1679台が売れている。
一方、ルノーR4の売れ行きは、それを超える勢いがあった。同じ1967年に、32万1079台を販売した。
流れを見ていたシトロエンは、1967年8月にAZAMエキスポートの販売を短期間で終了。2CVの後継モデルとして、1967年秋にディアーヌを発表する。
ハッチバックのディアーヌは、基本的に古いメカニズムに新しいボディを乗せたようなクルマだった。1968年、602ccエンジン版を追加し、2CVに対する市場の要望に回答。一時的にディアーヌは、2CVの倍の台数が売れる人気を獲得した。
ところが1970年2月になると、2CV 6として602ccエンジンが選べるようになり、再び2CVの人気が回復。2CVとディアーヌという、風変わりな2台体制がシトロエンに生まれる。そしてしばらく、そのコンビは続く。
2CV 6では、AZAMに含まれていた装備の一部も採用。排気量の拡大で、現代的な扱いやさを獲得していたことも売上に貢献した。
小さな602ccエンジンは、大きな存在になった。最高出力は29psで、AZAMの18psから比べれば、58%ものパワーアップを達成。AZAMには難しかった、低コストで済んだ2CVの販売向上策になったといえる。
この続きは後編にて。