【量産AMG最強の730ps】メルセデスAMG GTブラックシリーズへ試乗 新V8搭載 後編

公開 : 2020.10.18 15:20

メルセデスAMGの量産モデルとしては最強を誇る、サーキットマシンが登場。730psを生み出すV8エンジンもトピックですが、シャシーが煮詰められ、ドライビング体験も大幅に引き上げられています。ドイツで評価しました。

優れた重量配分と動的性能のFRモデル

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
サーキットでの、メルセデスAMG GTブラックシリーズは素晴らしい。そして通常のAMG GTより、かなりうるさい。

船の機関室や下町の工房のように、AMG GTブラックシリーズの車内には、ノイズが共鳴する。ロードノイズが聞こえない場合でも、エンジンノイズが騒々しく響く。

メルセデスAMG GTブラックシリーズ(欧州仕様)
メルセデスAMG GTブラックシリーズ(欧州仕様)

新しいV8エンジンは、ざらついた魅惑的なサウンドを発する。通常のAMG製のV8エンジンとは異なる。フェラーリのように高音を響かせたり、マクラーレンのようにフラットな唸りでもない。

筆者は、チューニングを受けた2代目フォード・エスコートのサウンドに、少し似ていると感じた。33万5000ポンド(4489万円)もするクルマだから、もう少し個性のある響きでも良いように思う。でも、好きだ。

そして、ドライビング体験も大好きになった。重量配分の正しい、高い動的性能を備えるフロントエンジン・リアドライブのクルマに乗ったら、丸1日楽しんでいられる。メルセデスAMG GTブラックシリーズは、まさにそれ。

バランスは、アストン マーティンV12ヴァンテージSのよう。それでいてポルシェ911 GT2 RSのような積極性と個性がある。ファンタスティック、といいたくなる。

縁石にタイヤが乗り上げると、ガタガタと音を立て、振動が伝わってくる。それ以外の場面では、乗り心地は硬すぎず、落ち着きすら感じられる。

魅力的なコミュニケーション力の高さ

コーナーでは身のこなしに合わせるように、わずかにボディがロールする。ある意味で、911 GT3 RS以上の乗り味だと思う。

車重は1520kgで、AMG GT Rより35kg軽い。燃料などを搭載した状態で計測してみると、1665kgになっていた。このボディサイズや最高速度、レイアウトを考えれば、1600kg前後は妥当だろう。余裕のある冷却系も必要となる。

メルセデスAMG GTブラックシリーズ(欧州仕様)
メルセデスAMG GTブラックシリーズ(欧州仕様)

その車体を、自由に振り回せる。挙動にも感心する。信じられない勢いで加速し、ブレーキが強力に減速してくれる。フェードする兆候すらない。

エンジンはだいぶクルマの中央側に寄せてあるものの、まだドライバーの前にある。コーナーへの侵入速度と重心移動を意識していないと、アンダーステアが出てしまう。実際、ブレーキが不要な高速コーナーでは、安定したアンダーステア傾向にある。

速度域に関わらず、730psというパワーで旋回姿勢の調整は可能。AMG GTブラックシリーズに載ったフラットプレーンのV8を唸らせれば、クルマのコーナリングラインを補正できる。

スタビリティ・コントロールが部分的にオンの状態では、ノーズがコーナー出口へ向く前に、パワーが絞られるようだった。オフにすれば、10段階のトラクション・コントロールが支えてくれる。コーナリング姿勢を、より積極的に変化させて楽しめる。

AMG GTブラックシリーズの運転を魅力的にしている要因の1つが、コミュニケーション力の高さ。AMG GT Rでは、こんな印象はなかったと記憶している。

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