【詳細データテスト】ホンダ・ジャズ(フィット) 抜きんでた広さの車内 燃費/洗練性に優れたドライブトレイン クルマ好きには訴えかけず
公開 : 2020.10.17 11:50 更新 : 2020.10.17 12:02
走り ★★★★★★☆☆☆☆
先代ジャズのハイブリッド仕様は、ストレートでもコーナーでも、パフォーマンスやドライバビリティ、さらには機械面の洗練性でも苦戦した。苦戦、というよりむしろ悪徳というレベルだった。
ところが、今回の新たなハイブリッドパワートレインは、スタートの時点からもっと有望だ。旧型の1.5L自然吸気4気筒は苦しげで、負荷がかかるとちょっとばかりミキサーを思わせる荒々しい金属質な羽音で満ちる。それに比べて、新型はずっと静かだ。
ハードに加速すると、平凡なノイズはやはり聞こえてくる。それでも、CVT搭載車にありがちな唸りはほとんどない。それどころか、新開発のe-CVTはエンジン回転数を一定に保ちつつ巧みに速度をマネージメントし、スロットルペダルをベタ踏みすれば、サウンドもフィールもステップ変速のように明確なシフトアップ感のある加速が炸裂する。
この性質は間違いなく歓迎できるものだ。もしかしたら、変速メカニズムとしてはよりコンベンショナルなDCTだと勘違いするかもしれない。
しかし、客観的な尺度では、取り立てて語るほどのものはない。直線加速性能は0-97km/hが9.6秒で、クラス水準に対し強く非難されるほどかけ離れてはいない。だが、48-113km/hが10秒というのは、ヤリスが8.8秒だったことを考えれば、競争力が低いと言わざるをえない。
このジャズは、時として加速が苦しそうだと感じられることがある。とりわけ、高速道路の合流や追い越しでは。それでも、主戦場と想定される市街地では、すべてが丸く収まる。駆動用電気モーターは、走り出しの強力なパンチとシャープなスロットルレスポンスをもたらす。
また、エンジンとモーターを駆使したさまざまな走行モードの処理ぶりは、スマートにチューニングされている。さらに、街なかでの短距離移動はほぼ電力で賄い、結果として燃費向上によりランニングコストを低減することも見込める。
だが、ブレーキ性能はさほどホットではない。それは、燃費改善を期して、転がり抵抗の低いヨコハマのエコタイヤ、ブルーアースを履かせたことも一因だろう。ペダルに伝わる回生ブレーキと四輪の摩擦ブレーキの協調させぶりはかなりなめらかだが、絶対的な制動性能は限定的だ。
気温20℃の路面が湿ったテストコースでは、113km/hから制止するまでに65mを要する。このクラスで、より大きいホイールとハイグリップなタイヤを装着するモデルなら、50mに近いところまで制動距離を詰められるものだ。
不安を覚えるほどの欠陥でも、安全面で問題になるほどだとも、われわれは考えていない。とはいっても、オーナーであれば前もって知っておいたほうがいいだろう。