【不発のカブリオレ】ブリストル405とラゴンダ3リッター ドロップヘッド・クーペ 前編

公開 : 2020.11.01 07:20  更新 : 2022.08.08 07:35

航空機の製造水準とBMW由来のエンジン

ブリストル2リッター・ファミリーは、威勢のいい直6エンジンと洗練されたシャシーを備え、英国の自動車技術の先端にいた。戦後賠償の1つとして、BMWの技術を奪取。BMW 328を筆頭に、ドイツの高い技術力を活用したモデルだった。

評価の高いBMW 328との結びつきと、航空機の製造水準に準ずるという触れ込みで、ブリストル405は優れたイメージを獲得。401や403同様に、405にもアルミニウムが積極的に用いられた。

ブリストル405ドロップヘッド・クーペ(1954年〜1958年)
ブリストル405ドロップヘッド・クーペ(1954年〜1958年)

中でも405ドロップヘッド・クーペは、402以来のカブリオレ。ブリストル製モデルでは、最も希少性が高い。1954年の新車時は、3188ポンドとサルーンモデルと同じ値段が付いていた。

ブリストルのフィルトン工場で、フロントドアより前方のボディ部分までが組まれたシャシーは、アボット社のワークショップへと自走で移動。6台単位で届けれれ、注文を受けると残りのボディが作られた。

ところがアボット社は、フォードとエステート・ボディの製造を受託。ブリストルのボディは、別のコーチビルダーが引き受けるようになる。その1つのティックフォード社は、ラゴンダ3リッターのボディも製造していた。

1906年創業という、古い歴史を持つラゴンダ。1930年代には、V型12気筒を搭載したエキゾチックなドロップヘッド・クーペも生み出していた名門だが、経営は苦しかった。

トラクターの製造で成功していた、デイビッド・ブラウン。戦前のスポーツカーを愛していた彼は、1947年にステーンズを拠点とするラゴンダを、アストン マーティンとともに買収する。2つのブランドを救った。

アストン マーティンDB3譲りの直6

戦後のラゴンダとして登場したモデル、2.6リッターと3リッター。強い存在感を求めて、フランク・フィーリーは、ウエストラインの高い優雅なボディを描き出した。

その内側には、2922ccの直列6気筒、英国初のDOHCエンジンを収容。最高出力142psの、アストン マーティンDB3にも搭載された、LB6型ユニットだ。

ラゴンダ3リッター・ドロップヘッド・クーペ(1953年〜1958年)
ラゴンダ3リッター・ドロップヘッド・クーペ(1953年〜1958年)

クランクシャフトを4枚のメイン・ベアリングで支えるアルミ製で、戦後のラゴンダ製サルーン用に手が加えられている。1950年代、アストン マーティンDB2やDB2/4などにも選ばれている。

フル・シンクロメッシュのトランスミッションやインボードのリアブレーキ、ラック・アンド・ピニオン式のステアリング、内蔵油圧ジャッキなどとともに、エンジンはヨークシャーの工場で製造。深いクロス構造のシャシーに組まれた。

サスペンションは独立懸架式。フロントがコイルで、リアがトーションバーを採用し、短いウイッシュボーンがハブにつながっている。この構造のため、ラゴンダ3リッターのハンドリングには、スイングアクスルらしい癖がある。

2.6リッターのラゴンダ・サルーンより、全長が200mmほど長い3リッター。短めのホイールベースもあって、長さが強調されてしまうプロポーションだ。

1958年に役目を終えたラゴンダ3リッターだが、日の当たる存在ではなかった。1960年代から1980年代にかけて、アストン マーティンと共通するエンジンを目的に、かなりの台数のボンネットが空になっている。

この続きは後編にて。

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