【不発のカブリオレ】ブリストル405とラゴンダ3リッター ドロップヘッド・クーペ 後編
公開 : 2020.11.01 16:50 更新 : 2020.12.08 08:40
ブリストル405とラゴンダ3リッターという、戦後に誕生したドロップヘッド・クーペ。BMWとアストンによるエンジンを積んでいながら、評価は不振。50台前後という少ない台数で幕を閉じています。詳しくご紹介しましょう。
戦前の香りがするラゴンダ3リッター
今回ご登場願ったのは、英国ウォーミンスターのクラシックカー専門店が売りに出している、サンド・カラーのラゴンダ3リッター・ドロップヘッド・クーペ。うまく現代まで生き残り、価値も高い。
車高の低いブルーのブリストル405と並ぶと、ラゴンダの肉厚ぶりが強調される。離れて見ると、どこか子供の玩具っぽい。
デザイナーのフランク・フィーリーは、フェンダーまで一体になった新しいスタイリングを、自分のものにするのに苦労していた。ジャガーを創業し、デザイナーとしても腕をふるったウィリアム・ライオンズとは対象的だ。
それでも、3リッター・ドロップヘッドのボディラインは優雅。斜め後方から見ると、ボディラインと曲面の構成が素晴らしい。とても惹かれる後ろ姿だと思う。
フードをきれいに折りたたむには、ブリストルと同様に大人2人が必要。小さなリアウインドウと、太いリアクォーターが付いている。リアシート側は閉じたまま、フロントシート上だけオープンにする、デ・ビル・ポジションも選べる。
ラゴンダ3リッターのドアは、リアヒンジ。戦前の香りがする。
ダッシュボードには、落ち着いたウォールナットのウッドが張られ、メーターパネルには大きなメーターが3つ並ぶ。ステアリングホイールも大径。イグニッションやライト・スイッチは、助手席側から操作しやすい位置にある。
ブリストル405もラゴンダ3リッターも、パッケージングで優れるわけではない。リアシートはラゴンダの方が広い。
対象的なブリストルとラゴンダの操縦性
フロントシートは、ラゴンダが左右に分割したベンチタイプなのに対し、ブリストルは座り心地の良いセミバケット・タイプ。ラゴンダにはアームレストが付いていて、多少は体を支えてくれる。
ラゴンダは、低速域での操舵が特に重い。ビンテージ感が強い。ステアリングホイールを握る腕が疲れたら、アームレストで休めることができる。ステアリングはハイギアで正確だが、ブリストルのように、コーナーで路面と対話することは難しい。
クラッチペダルもブレーキペダルも、かなり重い。もしオーナーになったら、ジムに通わずにドライブを愉しめば、適度なワークアウトになりそうだ。
ブリストル405でペースを速めても、落ち着きは失わない。クラシカルなデザインから想像する以上。一方のラゴンダ3リッターで限界領域を探ろうとすると、感情的な若者のように思えてくる。
カーブへ高めの速度で侵入すると、ボディは大きく傾く。外から見ていると、堂々とした雰囲気もあるが、不安にもなる。スタイリングほど優雅ではない。ゆったり走るのも、ルックスに不釣り合いなほど力がいる。
荷重移動などの条件が揃えば、オーバーステアと呼べそうな挙動にもなる。だが、不安定なリアが、操舵されているようにも思える。
対象的に美しいほどに滑らかで、軽快なブリストル405のステアリング。素直なシフトチェンジのタッチとあわせて、高いグリップのタイヤを履きたくなる。ラゴンダとは比べ物にならないほど、走りは鋭く機敏。