【詳細データテスト】メルセデスAMG GLE 53 度を越さない程度に速い ステアフィールやや不自然 隠しきれぬシャシーの硬さ
公開 : 2020.10.25 08:50 更新 : 2020.10.31 22:05
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
よりスポーティなモードを選び、狭い道を目まぐるしく飛ばしてみると、GLE 53はなかなかのものだ。決して小さくも軽くもないクルマだが、そこそこ速く走らせた際にボディの挙動をきちんと安定させ続けるさまは、驚くほど自信を与えてくれて、リスペクトすら覚える。グリップ限界を超えない範疇にあれば、テクニカルな道をハイペースで進むのはさほど難しくない。
8割程度の走りをした際にみせるグリップやスタビリティは、安心感を与えてはくれるが、決してその気になったりドライビングに熱中したりはさせてくれない。実際、スピードは速くても、走りは緩慢で味気ないのだ。
電子スタビリティ制御とシャシーは、確かに重量や慣性をうまくコントロールしている。それでも、その性能の余力がどれほどあるのか探ろうとしても、ドライバーはそのやり甲斐をさほど感じられない。
公平にみれば、それでも制御システムがドライバーの代わりに多くの仕事をしてくれていることはよくわかるし、比較的いい働きぶりではある。そのかわり、自分で運転するプロセスに熱中できることは決してない。
このクルマとのすれ違いを悪化させるのがステアリングだ。選んだモードによっては、不自然なフィールで、やや鈍重な感覚さえあるのだ。操舵への反応はどんよりしたところがあり、抵抗感の高まりが一貫していない。それまで粘り気のある感触だったものが、ある時点でゆるく希薄なものに切り替わる感じだ。
テスターの中には、このダルさは、サスペンションションがコーナーやバンプを先取りしてアジャストすることに関係があるのではないかとする声もあった。タイトなコーナーへの進入でしばしばみられたのだが、先を見越して車体のウェイトをスタビライザーが支えようとすることで、ステアリングが切りはじめに粘っこく重い、もしくは動きたがらないように感じられ、その後に軽くなるのではないか、と推測したのだ。
敢えていうなら、この手のクルマはそこまで激しく走らせたくなるものではない。少なくともGLE 53のほどほどなチューニングと操作のしやすさは、日常の足として使うペースであるならば非常に快適なのだ。