【アファルターバッハの夢】メルセデスAMGの歴史 飽くなきハイパフォーマンスの追求
公開 : 2020.10.23 11:20 更新 : 2021.01.30 21:14
狂気の時代 次々と生まれる伝説
1990年代の中盤以降は、GクラスやMLクラスのようなSUVを初めて投入するなど、ラインナップの肉付けに時間が費やされた。そして最終的に、スリーポインテッド・スターをつけたクレイジーなモデルがいくつも公道へ躍り出ることになる。
例えば、5.9L、MTのG 60や、全長6.2m、6ドアのS 63プルマン、CLK GTRの市販モデル(25台)など。SL 73 ロードスターは7291ccのエンジンを搭載していたが、戦後メルセデスの標準的な市販モデルに搭載された中で最大のものだと思う。
2001年、メルセデスとAMGは、戦前にグランプリを制覇していた技術を採用した。5.4L V8にスーパーチャージャーを追加することで、走りの良さを損なうことなく、次のレベルのパワーとパフォーマンスを実現したのだ。
2002年モデルのE 55は、最もパワーの低い状態でもフェラーリF40と全く同じパワーを発揮し、電子制御で250km/hに制限されていなければ、最高速度は320km/hを超えていただろう。
翌年の2003年は、AMGにとって重要な年となった。AMGのエンジンが、マクラーレンが製造したSLRに搭載されたのだ。
一方で、初のディーゼルを生産したのもこの年だ(C 30 CDIを覚えている人はいるだろうか)。230psしか出なかった5気筒ディーゼルは、AMGらしくないエンジンだった。また、同年にSクラスへ導入された6.0L V12ツインターボは、今年廃止されたばかりだ。
もう1つ画期的な出来事がある。それは、3年後の2006年に発表された6.2L 自然吸気V8エンジンだ。驚くべきことに、このエンジンは、既存のメルセデス製をベースにしたものではなく、AMGが一から設計した最初のエンジンだったのだ。
2006年は、メルセデスとAMGが初の「ブラックシリーズ」モデル、SLKブラックシリーズを発表した年でもある。
ラインナップ拡大 ハッチバックからガルウィングまで
驚異的なCLKブラックや影の薄いSL 65ブラックなど、ブラックシリーズはその後も続々と登場したが、これらはAMGにとって「準備運動」に過ぎなかった。
マクラーレンがSLRの開発を任されたとき、AMGの中には「自分たちにも同じことができたのではないか」と、不満を募らせる人もいた。彼らの不満はすぐに解消されることになる。SLSの登場だ。
SLRよりも安価で運転しやすく、ガルウィングドアも復活し、SLS AMG Eセルは初の全電動スーパーカーとなった。その後、ガルウィングのないロードスターや、よりハードコアなSLSブラック・エディションが登場する。
この時期には、R 63 AMGをはじめとした無名のモデルも現れる。6.2L V8エンジンを搭載し、510psを発生するこのラグジュアリーMPVは前例のない組み合わせだったが、0-100km/h加速をわずか4.6秒で達成できるにもかかわらず、販売されてから1年で販売中止となってしまう。
その後、AMGはメルセデスのAクラスに目を向け、フォルクスワーゲン・ゴルフRやアウディRS3などに匹敵する全輪駆動のホットハッチへと生まれ変わらせた。
A 45は、2.0L 4気筒エンジンから381psものパワーを引き出す非常にパワフルなハッチバックとなるが、運転のしやすさは維持されていた。
これにより、Bクラスを除くほぼすべてのメルセデスにAMGバージョンが登場し、そのすべてに「1人のマイスターが1台のエンジンを」という哲学に基づくAMG製エンジンが搭載されることになる。
やがてSLSに代わってAMG GTが登場し、同社が完全自社開発した2台目のモデルとなった。このクルマには、サーキット走行に特化したAMG GT RやAMG GT Rプロ、GTロードスター、プロレース仕様のGT3やGT4など、複数のバリエーションが存在する。