【プーマは標準グレードが一番】フォード・プーマ STライン X ヴィニャーレへ試乗 後編

公開 : 2020.11.01 10:20

英国編集部の高い支持を集める、フォード製コンパクト・クロスオーバーのプーマ。非ハイブリッド版に、新しいデュアルクラッチATという組み合わせが登場です。今回は、上級トリムグレードのヴィニャーレを評価しました。

走りを霞ませるデュアルクラッチAT

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
フォード・プーマのメーターパネルは、モニター式。スマートフォンのワイヤレス充電機能なども備わる。ただし、ヴィニャーレ以外のグレードでも標準装備。プーマのオーナーになれば、先進的な技術を体験できる。

メーターのグラフィックには、アナログ風スピードメーターの中央に、デジタルのスピードメーターが表示される。アナログメーターにこだわった理由はよくわからないが、モニターは鮮明で読みやすい。表示内容をドライバーが変更可能な点も評価できる。

フォード・プーマ 1.0T 125 STライン X  ヴィニャーレ(英国仕様)
フォード・プーマ 1.0T 125 STライン X ヴィニャーレ(英国仕様)

観察はこのくらいにして、プーマ STライン X ヴィニャーレを走らせてみよう。第一印象は、効きの良いターボと知的なATが登場する以前の、小排気量エンジン・モデルを運転した時を思い出させるものだった。

124psの3気筒ターボエンジンは、アクセルペダルを半分ほど踏み込んだ状態で、市街地付近の速度域をカバー。20.4kg-mの最大トルクがあり、ATの段数に関係なく、クルマを良く引っ張ってくれるように感じる。

しかしデュアルクラッチATは、動的性能と運転のしやすさという両面で、微妙な陰りを生んでいる。ドライブ・モードがノーマルの時は、ATはすぐにシフトアップを繰り返し、市街地での足取りは重く感じられてしまう。

加速時にATの段数が落ちるキックダウンを誘うには、アクセルペダルをかなり深く踏み込む必要もある。WLTP値での燃費を考慮した、チューニングなのだろう。

フラットでシャープで、軽快な身のこなし

スポーツ・モードを選択すると、ステアリングやアクセルペダルの応答性は高まる。ところが今度は、キックダウンを少し過剰にしたがる。中間加速でも、低い段数を選びたがる傾向がある。

ATのマニュアル・モードにも、一癖ある。ドライバー自ら段数を選ぶことで、パワートレインをより扱いやすくなる。でも、アクセルペダルを踏み込んでフルパワーを引き出したい時でも、エンジンの回転数が上がるとATは勝手にシフトアップしてしまう。

フォード・プーマ 1.0T 125 STライン X  ヴィニャーレ(英国仕様)
フォード・プーマ 1.0T 125 STライン X ヴィニャーレ(英国仕様)

動的性能は、コンパクト・クロスオーバーとしては充分に優れているが、特に機敏で積極的に走るわけでもない。AT任せで走らせていると、エコブースト・エンジンの存在感は驚くほどに控えめ。洗練性は高く、実際の燃費も悪くない。

フォード・プーマは、ライバルよりフラットでシャープで、軽快な身のこなしが特長。操縦性のまとまりは高い。路面が滑らかだったり、足回りと相性がいい場合は、優れたグリップ力とハンドリングを楽しめる。普通のハッチバックのように。

それと引き換えに、乗り心地には気になる部分がある。STライン X仕様の車高の低い引き締められたスポーツ・サスペンションと、18インチ・ホイールは、乗り心地で良くない影響を生んでいる。

郊外の舗装の悪い区間では、滑らかさに欠ける印象。高速道路などの橋桁の継ぎ目では、落ち着かず振動も出てしまう。

本気の高性能フォード・モデルとは異なり、高いダンピングレートの恩恵が受けられるのは、高めの速度域のみ。それでも、垂直方向の落ち着きは引き出せるものの、路面状況次第でぎこちなさも残るようだ。

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