【ポルシェ911 3.0 RSR】1975年ル・マン総合6位 ニック・フォーレとの再開 前編

公開 : 2020.11.08 07:20  更新 : 2020.12.08 18:45

カレラRS 2.7で16度以上の勝利

ボディパネルの一部は、より薄く軽量なスチール製へ交換。ガラスもさらに肉薄化されている。ホイールアーチは広げられ、15インチ7Jサイズのホイールに対応。バンパーは繊維強化ポリエステルで作られた。

ダックテールと呼ばれる、特徴的なバーゼル・スポイラーをリアに、深いリップスポイラーをフロントに追加。それまでの課題だった空力を改善し、リフトフォースを低減させた。

ポルシェ911 3.0 RSR(1974年)
ポルシェ911 3.0 RSR(1974年)

エンジンのパワーアップも忘れていない。ニカシル・コーティングを採用し、ボアは90mmに拡大。排気量は2341ccから2687ccへと増やされた。結果、192psだった2.4L 911 Sの最高出力は、20psほどプラスされた。

そのポルシェ・カレラRS 2.7のデビューは1973年。フォーレにとっては、レース続投にもつながった。

「911を手にしたものの資金が足りず、レース・キャリアは終わりだと思っていました。するとAFN社から、2台のRSを購入したから、1台をドライブしないかと電話があったんです」

「そんな話し、断るわけがありません。週末にレースを戦えるマシンがあることを確認し、即答です。911は信頼性が高く、バックアップ用のマシンが届いたのは、シーズン中盤になってからでした」

フォーレはすぐにカレラRS 2.7を手懐けた。1973年のSTPプロダクション・チャンピオンシップ・レースでは、16度以上の勝利を獲得するほど。

サーキットでの圧倒的な強さを示したRS 2.7は、販売面でも成功。参戦資格となる500台を生産できれば良いと考えていたポルシェにとっては、嬉しい驚きだった。

グループ3用のホモロゲ・スペシャル

RS 2.7が発表された1972年のパリ自動車ショーから1か月で、必要な注文台数に到達。最終的に1580台が作られ、シリアスなドライバーのもとへと渡った。

さらに、個人的にレース参戦するプライベーター向けとして、チューニング仕様の2.8 RSRも展開。量産ラインからシャシーを割り振り、55台だけが作られた。

ポルシェ911 3.0 RSR(1974年)
ポルシェ911 3.0 RSR(1974年)

2.8 RSRでは、917譲りのベンチレーテッド・ドリルド・ディスクブレーキに加え、大きなエアダムの付いたフロントバンパーを獲得。フロント9J、リア11Jのワイドなホイールを装備する。

フラット6は、ポアを92mmに広げ、排気量は2806ccに拡大。ピストンはマーレー製で、カムシャフトは906カレラ6から譲り受けている。

さらに1974年には、911 3.0 RSが登場。量産GTカーとして、グループ3カテゴリーに参戦することが目的の、ホモロゲーション・スペシャルだった。

見た目は、2.8 RSRに近い。しかし、それまでの課題に対処し、改良が施されている。

エンジンは2994ccまで排気量が大きくなり、公道用仕様では、233psを6200rpmで発生。フライホイールの不具合は直され、強度の足りないマグネシウム製のクランクケースは、10kgの重量増と引き換えに、対策品が組まれた。

「ル・マンを戦った仲間、リチャード・ボンドとジャン・ブラトンは、素晴らしい友人です」。フォーレが振り返る。レース仕様の3.0 RSRを駆れたドライバーは、少なかった。

「911 RS 2.7を運転するわたしを見て、ブラトンは感銘を受けたようです。一緒にル・マンへ参戦しないかと、電話をもらいました」

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