【詳細データテスト】ポールスター1 長いEV走行距離 高速域では快適だがやや非力 もっと軽ければ

公開 : 2020.10.31 18:50

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

このなかなかハンサムな2+2クーペは、左ハンドルのみの設定。その誕生までのストーリーには、通りいっぺんではないところが多分にある。

そもそもの発端は2013年、ボルボ名義で開発されたコンセプト・クーペとして発表された。デザインを手掛けたトーマス・インゲンラスはその後、ポールスターのCEOに就任し、このクルマの生産にも関わることになる。

リアのモーターを主な動力源とすることをアピールするかのように、後席背後の高圧ケーブルをトランク側の透明カバー越しに見せるデザイン。スーパーカーのエンジンフードを意識してのことだろうが、これを喜ぶユーザーが果たしてどれくらいいるだろうか?
リアのモーターを主な動力源とすることをアピールするかのように、後席背後の高圧ケーブルをトランク側の透明カバー越しに見せるデザイン。スーパーカーのエンジンフードを意識してのことだろうが、これを喜ぶユーザーが果たしてどれくらいいるだろうか?    JOHN BRADSHAW

まるで親会社である中国のジーリーホールディングは、インゲンラスに倍賭けの挑戦状を叩きつけたかのようだ。彼個人の名声を得られるか、そして1台きりの巨大な電動ボルボだけでなく、それに続くモデルも生み出せるか。彼は、その賭けに敢えて乗ったわけだ。

そうした経緯から、ポールスター1がボルボS90のクーペ版だと誤解されるのも無理はない。そんなクルマは、今のところ存在しないのだが。

13万9000ポンド(約1946万円)ものエキゾティックなGTカーとしては、そのルックスは比較的控えめだ。とはいえ、そのボディパネルは多くのライバルよりも特殊なもの。ほぼすべてにカーボン補強ポリマーを用い、重量削減が図られているのだ。

ベースとなるのは、ボルボのオールスティール製プラットフォームであるSPAで、ホイールベースを短縮。これにドラゴンフライ、すなわちトンボと名付けられたカーボン製の補強材を追加。上部構造のピラーやキャントレール、ルーフもカーボン化している。その結果、すべてがスティールだった場合よりも、230kgほど軽く、45%ほどねじり剛性を高めている。

それでも、これは軽量なクルマではない。おそらくこれは、これまで市場にはなかったほど意欲的な技術を盛り込んだプラグインハイブリッドだ。ガソリンエンジンに、3つのモーターと伝達装置を組み合わせ、駆動用バッテリーの容量はBMW i8の3倍ほどもある。その結果、実測値は液体類込みで2327kg。公称値よりは軽かったが、2tを優に上回る。

推進力の主体となるのが、ポールスターがダブルERADと呼ぶ、2基のリアモーター。ボルボのT8グレードのPHEVと異なり、116psの電気モーターと遊星ギア式トランスミッションをリアアクスル付近に2組設置し、左右各輪を駆動する。

この構造上、左右非対称の動力配分を行うことが可能になる。これまで、ハイブリッドやEVでこれほどまでのトルクベクタリング機構を備えたものはなかった。

電気モーターに電力を供給するのが、2分割されたリチウムイオンバッテリーパック。ひとつはリアアクスルの上に、もうひとつはセンタートンネル内に、それぞれ配置され、容量は合計で34kWhに達する。WLTPモードのEV航続距離は124km。さらに、50kWhの直流急速充電器を用いれば、1時間以内にフル充電できる。

リアモーターをバックアップするのが、ボルボではおなじみの2.0Lツインチャージャー直4ガソリンエンジン。フロントに横置きされ、8速ATを介して前輪を駆動する。また、69psのスターター/ジェネレーター兼用モーターが組み合わされ、前輪の駆動と動力用バッテリーの充電に用いられる。

サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。標準装備されるオーリンズ製の手動調節式デュアルフローバルブダンパーは、圧縮側でも反発側でも自動的に減衰レートを調整して、スムースな乗り心地を約束するという。

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