【夢に見るほど欲しい】アルピーヌA110 美しさと軽さ、しなやかさ 2020年ドリームカー 英国選

公開 : 2020.12.26 21:45  更新 : 2021.05.13 12:00

美しいスタイリングのフレンチ・スポーツクーペ、アルピーヌA110。しなやかな足と引き出しやすいパフォーマンスで、爽快なドライビングが味わえると、英国編集部は2020年のベスト・ドリームカーに選出しました。

軽く控えめなパワーが生み出す楽しさ

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
2017年末のこと。雪深いフランス奥地の丘陵地帯で、真新しいアルピーヌA110と出会った。スポーツカーというカテゴリーに、新鮮な空気が吹き込まれた瞬間だった。

発表から3年が経過した2020年でも、その新鮮味に陰りはない。小さなフランス製スポーツカーは、今もわれわれの心を掴んでやまない。

アルピーヌA110(欧州仕様)
アルピーヌA110(欧州仕様)

A110の最大の魅力は、路面やドライバーとの柔軟な呼吸。多くのスポーツカーで落ち着きがなくなり、かき乱されるような路面でも、アルピーヌは滑らかに進む。

しなやかに動くサスペンション。岩のように硬いスプリングだけが、ドライビング・ファンを生み出すわけではないということを証明した。近年のスポーツカーでは見られない味付けだ。

そのしなやかさを許しているのが、A110の軽さ。アルミニウム製のアーキテクチャを基礎とし、エントリーグレードなら1103kgしかない。全長は4.1m、全幅は1.8mを超えないほどコンパクトでもある。

シートは2脚で、サスペンションは4輪ともにダブルウイッシュボーン。フロント・サスペンションの間に燃料タンクが収まり、ルノー製モデルから譲り受けたエンジンとトランスミッションが、ドライバーの後ろに載る。パッケージングも素晴らしい。

軽量でありながら、インテリアは上質。クラス・ライバルを、凌駕している。

パワーも充分。252psの最高出力と加速感は、公道で存分に楽しめる範囲にある。高速道路でも、深刻な速度違反を犯す心配は少ない。クルマの限界値が低いほど、一般的なドライバーはパフォーマンスを引き出しやすくなる。

シャープで硬い足のモデルとは違う存在

アルピーヌA110はサーキットでも楽しい。タイトコーナーでわずかにドリフトしながら旋回していくのは、至福のひとときだ。

反面、高速コーナーや強い横風が吹いた時の安定性は、少ない弱点の1つ。LSDの装備で改善するという意見もある。それでも、パワーと重量とのベスト・バランスは、弱みを超えるほどに素晴らしい。

アルピーヌA110(欧州仕様)
アルピーヌA110(欧州仕様)

2019年に登場したA110 Sは、より引き締められ、より多くのパワーを得ていた。ライバルの一部に接近するために。

多くの場合、ハイパワーな仕様は、ベースグレードを霞ませてしまう。特に英国では、その傾向が強い。A110 SがベースのA110をはるかに超える割合で売れるとは、アルピーヌも想像していなかっただろう。

A110 Sは、間違いなく素晴らしい。ベースのA110を体験していなければ、絶賛したかもしれない。でも、シャープで足が硬い、サーキット・フォーカスのマシンなら、ほかにもある。アルピーヌA110は、それらとは違う存在として生まれてきたのだと思う。

審査員コメント

Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)

2つの比類ない特徴が、A110へ栄光を与えた。1つは、個性のためにアグレッシブさではなく、美しさを重視したという点。

もう1つは、ほかの主要メーカーが真似しないような方法で、正真正銘の輝きを生み出したという点。ルノーという存在が、アルピーヌの根底にはある。

この2点が、ユニークさを生んでいる。どんな人が見ても美しく、正確で機敏に運転できる。控えめなパワーでありながら、充足感の高い速さが得られる。アルピーヌが導き出した、大成功だ。

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