【次期MIRAIと出会う】トヨタ・ミライ、新型プロトタイプ試乗 後輪駆動のTNGA、走りは変わる? 航続距離850km/5人乗り

公開 : 2020.11.02 07:10  更新 : 2021.12.27 23:57

2代目ミライ試作車 どんなクルマ?

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
photo:Toshikazu Moriyama(森山俊一)

燃料電池が発電した電力により走行する自動車がFCV。電気以外で排出されるのは水だけ。

それ故にゼロ・エミッション車として注目されているが、今回試乗した次期ミライも含めて量産モデルは数えるほどしかない。

新型ミライ・プロトタイプのグレード構成は、上位のZ系と、標準のG系を用意。写真は、19インチ・タイヤを履くGエグゼクティブ・パッケージ。
新型ミライ・プロトタイプのグレード構成は、上位のZ系と、標準のG系を用意。写真は、19インチ・タイヤを履くGエグゼクティブ・パッケージ。    森山俊一

EV(電気自動車)と比較すれば寂しい限りだが、電力と水素の圧倒的なインフラの差を考えれば仕方ない。しかも、燃料電池だけでなく、水素タンクなど発電システムを構成するものの大半は、専用に新規開発。

技術的にも、FCVのほうがハードルが高い。その点からも、先代ミライの登場は画期的だった。

FCの出力(発電)制御は供給する水素・空気の単位時間当たり流量で行うが、当然アクセル操作と流量制御にはタイムラグが伴う。またアクセルオフ時には燃料電池内に水素と空気が溜まる。

先代ミライでは、補助的な電力供給システムとして2次電池を置き、アクセルオン時のパワーアシストとアクセルオフ時は燃料電池内の滞留した水素・空気により充電を行う。

次期モデルでは、FCの小型軽量化・高効率化など全体的に熟成が進んでいるが、こういった制御の基本構成は先代を踏襲する。

次期ミライの最大の注目点は、FCVの量販化に向けたコンセプトの変化。それはFR採用でスポーツ性を高めたという意味ではない。

クラウンの骨格 5人のための内装は?

プラットフォームはクラウンなどにも採用されるGA-L。というか、骨格構成も含めてクラウンと近似の構成。

水素タンクを置くためにフロアトンネルなどの設計変更が加えられているが、クラウンのFCVバリエーションと考えてもいいくらいだ。

(上)新型ミライ・プロトタイプの前席内装(下)センターコンソールにも水素タンクを新設した2代目は、FR駆動のパッケージを採用。
(上)新型ミライ・プロトタイプの前席内装(下)センターコンソールにも水素タンクを新設した2代目は、FR駆動のパッケージを採用。    森山俊一

専用設計大盤振る舞いの先代とは大違い。量産性を考えた設計なのだ。

インパネやキャビンにもどことなくクラウンと似た雰囲気が漂う。パッドPC的デザインのセンターディスプレイやメーターパネルデザインなどで嗜好を違えているが、操作/表示系のレイアウトやドラポジからの見下ろし感が同系統。

ドライバー志向でゆったりとした居心地が最上級クラスのセダンを思わせる、という意味でもクラウン的である。

後席も同様。後席を独立型2座とした先代のほうが特別仕立ての感はあるが、乗車定員が4名になるだけでなく、ショーファードリブン的でもあった。

ドライバー向けセダンという面でも、実用性とスタイル面のまとまりのいいクルマである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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