【強力版MHEV、「B6」を積む】ボルボXC60 B6 Rデザイン ジワジワ来るスポーティネスは、買い?

公開 : 2020.11.04 05:50  更新 : 2021.10.11 13:50

さらに洗練度の高いシャシー

しかしXC60 B6 Rデザインの最大のチャームポイントは懐の深いシャシー、そしてその運動神経のよさを隠さないどころか裏打ちする、ワイド&ボールドな佇まいだろう。

つまりパワーもトルクもある48VのMHEVとはいえ、直4ベースなので元より鼻先はめっぽう軽くノーズの入りがいい。

モメンタム、インスクリプションが、ダイナミックシャシーで導入されているのに対し、試乗車のRデザインはスポーツシャシーを採用。ハンドリングを重視している。
モメンタム、インスクリプションが、ダイナミックシャシーで導入されているのに対し、試乗車のRデザインはスポーツシャシーを採用。ハンドリングを重視している。    前田恵介

そんな素性の良さに加え、Rデザイン専用にセッティングされた非エアサス仕様の足回りが、ドライブモードを切り替えても減衰力は不変ながら、恐ろしくドンピシャにキマっていて、可変である必要性をまったく感じさせない。

微低速域からよく動く足なので、21×8.5Jという大径ワイドホイールとは裏腹に、乗り心地も優しい。

それでいてワインディングに入っても、ロール量は感じさせながら、傾く速度は抑えめという絶妙のボディコントロールで、1.9m少々の全幅や1940kgの車重を忘れさせてしまう。

左右の切り替えしでも気持ち悪く揺り返すことがない。

それだけ全体的に剛性感が高く、ステアリングを握る手元にマスが収まってくるかのようなまとまりなので、スケール感が随分と違うが、何だかまるで良質のホットハッチでも走らせている気分になるのだ。

Rデザイン 内外装にも注目

そしてクルマから降りても、ジワるポイントが多々ある。

前述のとおりホイールは21×8.5Jと、上位機種であるはずのT8リチャージの20インチ×8Jをも上回る。

内装では、スマホのワイヤレス充電を採用したほか、オプションで選べるB&Wのプレミアム・サウンド・オーディオシステムがアップデートされている。
内装では、スマホのワイヤレス充電を採用したほか、オプションで選べるB&Wのプレミアム・サウンド・オーディオシステムがアップデートされている。    前田恵介

リム幅の拡大も横方向への食いつきにかなり効いていそうだ。

外観も、水平方向に開口部を広げてワイドさを強調した前後バンパーや、インスクリプションではクロームだった窓枠やルーフレールが総じてブラック仕上げとなるなど、全体としてシュっとしている。

静的質感についても、とくにインテリアのテーマや雰囲気はRデザインらしくスポーティ。

レザーとメッシュのテクスタイルによるコンビのスポーツシートや、インスクリプションではドリフトウッドが定番アクセントとなる部分には精密感のある打ち目のようなアルミパネルが張られている。

同じくアルミ仕上げのペダル&フットレストもRデザインならではのところだ。

トッピングではないスパイシーなMHEV

またMY2021からの変更点として、センターコンソールにはスマートフォンをワイヤレス充電できるCI規格のトレイが設けられた他、オプションで選べるバウアー&ウィルキンスのオーディオシステムはスピーカー素材を従来のケブラーからコンティニュアスコーンに変更している。

以前はクリアで澄み切った音という印象だったが、全域の表現力でふくよかさが増しており、加えて「ジャズクラブ・モード」が選べるようになった。

ボルボ日本法人は、2020年中に、SUVモデルのXCシリーズ以外も含め、全車の電動化を完了する。
ボルボ日本法人は、2020年中に、SUVモデルのXCシリーズ以外も含め、全車の電動化を完了する。    前田恵介

これまでもボルボ本社のあるイエテボリ市のコンサート・ホールが設定されていたが、今回は市内のジャズクラブの音響を再現しているというのだ。

それは、ただ可能だから加えてみました的な機能拡張ではなく、「愛車で過ごす時間がホーム感覚」の表れでもある。

「ジャズはお好き?」とボルボに聞かれて、「北欧メタルが好き」と答える人も決して少なくないとは思うが。

いずれスポーティだけどポン付け臭は漂わず、地に足ついたようでピリッとした生活感または生活観が漂うクルマとして、ボルボXC60 B6 Rデザインは、オルタナティブに対して敏感かつ肯定的になれる今日びの空気や気分を巧みに読み切っている。

何とか800万円アンダーに収まった車両価格といい、プレミアムなミドルSUVとして強烈な存在感を放つ1台だ。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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