【運転席も素晴らしい】メルセデス・ベンツSクラス S 500へ試乗 レベル3を実現 後編

公開 : 2020.11.12 10:20

最善か無か、というかつてのキャッチコピーを体現するように、技術と動的性能、快適性を追求した新型Sクラス。レベル4対応の自律運転システムを備え、アウトバーンではレベル3での走行を実現しています。ドイツで試乗しました。

処理能力を高めたMBUXシステム

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
インテリアの物理的なボタン類は、先代より27個減らされたという最新のメルセデス・ベンツSクラス。MBUXオペレーティング・システムは、モニターに触れるだけでなく、音声やジェスチャーでの操作にも対応。システムの処理能力は、50%向上している。

センターモニターに表示されるメインメニューは、わかりやすい。だが、深く階層が掘られたサブメニューに慣れるには、時間がかかるだろう。使いやすかったロータリー・コントローラーはもうない。

メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)

ドライバー正面のフロントガラスには、以前より広い投影領域を実現した、ヘッドアップ・ディスプレイを搭載。Sクラスでは初めて、拡張現実機能にも対応する。

オプションの、ブルメスター製4Dサウンドシステムにも感心する。フロントシートの背もたれに内蔵されたサブウーハーを含め、31ものスピーカーが車内に組み込まれる。

エアバックは、標準でフロント周りに10か所。オプションで、リア側に8か所追加できる。

リアシート側では、左右のフロントシート背面に11.6インチ・モニターを指定できる。MBUXシステムがオンの状態なら、車内だけでなく車両付近からでも、ポータブル・タブレットを介してSクラスのシステム操作が可能だ。

車内空間は、ロング・ホイールベース版の場合、リアシートで頭上空間が16mm、足元で24mm、肘周りで11mm、先代のSクラスより広くなっている。荷室容量も、20L増しの550Lを得た。

7代目のベストはコンフォート・モード

新しいS500 4マティックに搭載される6気筒エンジンは、先代から特にパワーアップはしていない。シルキーというわけではないものの、スムーズさは増している。

電圧48Vのスターター・ジェネレーター(ISG)が組み合わされ、低回転域の瞬発力は素晴らしい。中回転域では柔軟に仕事をこなし、高回転域まで積極的に回る。V8エンジンを搭載したライバルに迫るスピードを、現時点トップグレードのSクラスに与えている。

メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)

このS500 4マティックが採用するEQブーストと呼ばれるマイルド・ハイブリッドは、トランスミッション内にISGを内蔵。加速時に21psと25.3kg-mを上乗せする。その結果、システム総合での最大トルクは、直6としては驚きの78.3kg-mに達する。

トランスミッションは、自社製の9速AT。4マティックだから四輪駆動で、センター・デフを介して、前後タイヤへトルクを分配する。

ドライブモードは、エコとコンフォート、スポーツ、スポーツプラスの4種類が基本。インディビジュアル・モードもあり、ステアリングやアクセル、サスペンションなどの設定を任意に登録できる。

筆者は、7代目Sクラスのベストは、コンフォート・モードだと感じた。電気パワーステアリングは適度に軽く正確。渋滞や惰性走行では、自動的にエンジンが停止する。滑空しているかのように、エアサスペンションは路面を均し、しなやかにボディを進める。

滑らかなドイツの舗装では、優れた衝撃吸収性でアスファルトから車内を隔離。細かな起伏も、完全に打ち消していた。その洗練度は突出して高く、長距離移動も極めて安楽なはず。

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