【運転席も素晴らしい】メルセデス・ベンツSクラス S 500へ試乗 レベル3を実現 後編

公開 : 2020.11.12 10:20

先代より軽快に、一段高められた動的性能

エンジンの回転数が上昇すると、わずかな排気音が耳に届く。しかし、ドアミラー付近の風切り音やロードノイズと同様に、レザーに包まれた車内の遠くで、ささやく程度だ。

スポーツ・モードへの切り替えは一発。数少ないアナログのスイッチか、センターモニターのメニューから選べる。するとSクラスは、明確に機敏さを強める。

メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)

すぐに分かるのは、ステアリングを切った時の重みが増すこと。アクセルペダルの反応は鋭くなり、排気音の主張も大きくなる。サスペンションも、姿勢制御を高める意図で引き締まる。

重みを増したステアリングは操る自信を高め、Sクラスの新次元と感じられる敏捷さでコーナーを滑らかに曲がる。コーナーへの侵入にはシャープさが加わり、ステアリングの戻りも素早くなる。

カーブの続く道をハイペースで走ることも、驚くほどに容易。気を使うのは、全幅の広がったボディサイズくらいだろう。

3チャンバーを備えるエアサスペンションは、タイトなカーブで見事に姿勢を制御。ロールだけでなく、加減速によるピッチングも鎮め込む。

四輪駆動の4マティックは応答性を高め、優れたグリップ力とトラクションを、常に与えてくれる。一段高められた動的性能が、わずかに増えた車重を見事に隠している。

運転席でのドライビング体験も素晴らしい

もちろんS500 4マティックは、直線も速い。苦労なく160km/h超の速度域まで到達し、さらに加速を続ける。アクセルペダルを目一杯踏み込めば、3.0Lの排気量が嘘のように、豊富なエネルギーが湧出。力強く路面を蹴りながら、Sクラスを突進させる。

わずかに気になる部分もあった。基本的には滑らかな、9速ATだ。マニュアルモードで6200rpmのレッドライン付近まで回すと、トルクが太いだけに変速時にわずかな衝撃が出ていた。

メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)

ブレーキペダルは少しスポンジーで、感触に乏しい印象だった。走行距離の浅い新車で見られるような、硬さは感じなかったた。

新しい最高を求めた、7代目メルセデス・ベンツSクラス。ドライブを終えれば、穏やかな気持ちでクルマから降りてこられるはず。ラグジュアリーなリムジンとして、現代のクルマでの移動を幸福な時間に変えてくれる。

リアシートでの快適性と静寂性だけではない。白眉のパフォーマンスとハンドリングを備え、運転席でのドライビング体験も、また素晴らしい。

リアシートにしか座らないオーナーは、これを体験できないなんて、少しかわいそうに思えてしまう。

メルセデス・ベンツSクラス S 500 4マティック(欧州仕様)のスペック

価格:8万7450ポンド(1180万円)
全長:5179mm
全幅:1921mm
全高:1503mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:10.5-12.5km/L
CO2排出量:181-216g/km
乾燥重量:1990kg
パワートレイン:直列6気筒2999ccターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:435ps/6100rpm+21ps
最大トルク:52.8kg-m/1800-5800rpm+25.3kg-m
ギアボックス:9速オートマティック

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