【詳細データテスト】アストン マーティンDBX 絶対値よりバランス重視 自然なハンドリング 惚れるサウンド
公開 : 2020.11.07 11:50 更新 : 2020.11.14 16:49
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
アストン マーティンの現在の経営陣は、100年以上にわたるクルマ造りの中で、DBXのように多用途性を持ったモデルを製作しようという試みが一度ならずあったという。
今回、新工場の設立と新型車の開発を並行して行ったわけだが、その資金調達は英国の株式市場を見回す限りもっとも無謀な部類に入るとみられていた。ところが、アストン マーティンは、そのきわめてタフな試みを成功させてみせた。
会長とCEO、そして大株主が入れ替わり、なにより最重要車種となるDBXの本格生産が、ウェールズはセントアサンの新設ファクトリーで開始されて3カ月ほどが経過した。
そのDBXには、アストンのスポーツカーやGTクーペと類似する要素がいくつもある。プラットフォームは完全新開発ながら、すべてアルミニウム素材で構成。押し出し材と鋳造材を組み合わせ、構造用接着剤で組み上げられる。結果、ライバル車たちより軽量かつ高剛性に仕上げられた。
このセグメントでもっともダイナミックなハンドリングカーを目指す上で、出発点としては最適解のはずだ。ところが、競合モデルと並べてみると、疑問も湧いてくる。公称2245kg、実測2328kgというウェイトは、たしかに2016年にテストした12気筒のベントレー・ベンテイガよりは軽い。しかし、昨年計測したランボルギーニ・ウルスに比べると重いのである。
アストン マーティン初のSUVであることはいうまでもないDBX。さらに、3気室式で最大95mmの車高調整が可能なエアスプリング、48V電装系とそれを利したアクティブスタビライザーも、初めて導入したクルマだ。なお、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクを採用する。
パワートレインは、メルセデスAMG製の4.0LツインターボV8をモディファイしたもの。ベースユニットより圧縮比を下げ、ターボチャージャーと冷却システムに手が入っている。
ピークパワーは550psと、ライバル車より魅力的な数字とはいえないが、主要マーケットと見込まれる中国における排気量ベースの税制を勘案すれば、ゲイドンがなぜこのエンジンを選択したのか理解できる。おそらく、今後の展開としてプラグインハイブリッドが続き、火を吹くようなV12は切り札として残しておくはずだ。
トランスミッションはメルセデス製9速トルコンATで、アストンの他モデルが搭載するZF製8速ギアボックスは見送りとなった。V8の最大トルクは71.3kg-mだが、これはトランスミッションのトルク容量の上限が理由だ、というのがもっぱらの噂である。
このトランスミッションと高められた低速トルクにより、牽引重量は際大2700kgに達する。アクティブ制御のセンターデフは、ほぼ100%の駆動力をリアへ伝送することが可能。リアデフは、左右輪へのトルク配分を電子制御するe-LSDとなっている。