【詳細データテスト】アストン マーティンDBX 絶対値よりバランス重視 自然なハンドリング 惚れるサウンド
公開 : 2020.11.07 11:50 更新 : 2020.11.14 16:49
走り ★★★★★★★★☆☆
いわゆるスーパーSUVの中には、ドライブトレインやサスペンション、ステアリングなどの最先端テクノロジーに支えられ、ずば抜けて融通の効く走りをみせるものがある。それらは日常遣いでのシンプルで変わることのないドライバーアピールを考えた場合、助けになるよりむしろ障害になることが多かった。
ところがDBXは、走り出した瞬間から、咳払いのような音とともにカリスマ性を見せつける。間違いなく出来がいいと思わせる兆候だ。デフォルトのGTモードにしたままでも、V8ユニットは魅惑的でソウルフルな唸りを上げ、望めばもっと大音量で吼えさせることもできる。
低速域での走りは心地よい。スポーツとスポーツ+の各モードでは、変速がややぶっきらぼうなところをみせはじめるが、GTモードならスムースさを失わない。変速ポイントはアクティブエキゾーストのバッフルが多少開く3000rpmを超えたくらいのところで、そのリッチなサウンドに聞き惚れさせてもくれる。
市街地を離れ、スロットルペダルをより深く踏み込めるようになると、キックバックがややスローだと思う場面もあるだろう。さらに、変速はそれほどクイックではないので、マニュアルモードを選びたくなるかもしれない。もっとも、それらはたいした問題ではないのだが。
それよりも気になりそうなことはほかにある。ベントレー・ベンテイガ・スピードやランボルギーニ・ウルス、はたまたポルシェ・カイエン・ターボS Eハイブリッドなどを走らせた経験のあるドライバーであれば、DBXのペダルをはじめて床まで踏み込んだときに思うだろう。「これで本当に全開なの?」と。
たしかに、DBXの加速は強烈なほどの爆発力を感じさせるものではない。0−97km/hのタイムは4.6秒、ゼロヨンは13.1秒だった。ウルスはそのどちらも、これより1秒以上速い。ライバルにこれほど後れを取ったのは、アストンとしても不本意だったに違いない。
とはいえ、単体でみれば十分すぎるくらい速く感じられる。レスポンスにも優れ、中回転域のトルクはたっぷりある。ブレーキは強力で、ペダルフィールはプログレッシブ。また、このサイズのクルマに期待するようなスピードも得られる。
敢えてやりすぎだと思うようなレベルにしなかったことで、より一層好ましいと感じるユーザーもいるだろう。われわれはそちらの意見に賛成だ。