【異例づくめの会見】トヨタの業績、なぜ急激に回復したのか コロナに負けぬ理由は 対テスラ対策も
公開 : 2020.11.08 05:50 更新 : 2020.11.08 11:23
トヨタが中間決算を実施。史上初となる社長出席でした。コロナ禍という有事で、業績を回復した理由、今後何を目指すのか? 社長の言葉を追いました。
トヨタ史上初 中間決算説明に社長出席
「コロナ危機という、有事であることで出席しております」。トヨタの豊田章男社長は2020年11月6日、同社の2021年3月期第2四半期決算説明会で、記者の質問に対してそう答えた。
トヨタの社長が中間決算に出るのは、トヨタ史上初。異例なことである。
社長の出番は通常、通年決算や株主総会などの大舞台だ。
コロナ禍で、トヨタがいかに踏ん張り、業績を回復したのか、その背景には何があるのかについて、豊田社長は自身の言葉で伝えたかったのだと思う。
その業績だが、新型コロナウイルス感染拡大が世界各地で続いている中、経済回復をしている国や地域を中心として回復傾向が明らかになった。
具体的には、販売台数は401万台。営業利益は5199億円となった。
むろん、前年同期比で見れば、新型コロナウイルス感染拡大の影響は色濃い。販売台数では94万台減、また営業利益では8792億円もの減少なのだ。
もう少し細かく見ると、第1四半期(4〜6月)は日本で緊急事態宣言、海外では都市封鎖を意味するロックダウンなどがおこなわれ、販売台数は前年同期比69%だった。
それが、第2四半期(7-9月)では93%まで引き上がった。
自動車産業全体として、回復傾向は見えているが、トヨタとしてどうして販売を回復できたのか、豊田社長はじっくりと説明した。
あえて数字を 他メーカー道しるべに
豊田社長が強調したのは「基準を作った」ことだった。
5月の決算説明会で「全世界販売800万台、今期の営業利益5000億円」という数字を公表した。
同時期に他の日系自動車メーカーがおこなった決算説明会では「コロナ禍で先々の状況が不透明であり、具体的な数字を示すのは困難」としていたが、トヨタはあえて数字を出した。
この点について豊田社長は「コロナ危機という先の見えない時だからこそ、トヨタの見通しが自動車産業に関わる方々にとって、1つの道しるべになるのではないかと考えた」と、半年前の決断について振り返った。
確かに、自動車産業に従事する人は日本国内だけで550万人おり、周辺産業を含めて、地域社会と日本全体に及ぼす影響力がとても大きい。
その中にあって、売上高、生産台数、販売台数など、規模におけるトヨタの存在は他のメーカーを圧倒している。
当然ながら、各メーカーはトヨタの動きを注視しており、結果的にトヨタが日本自動車産業のベンチマークとなっている。
だから、トヨタに関するニュースは、決算のような経営に関することでも、新車の技術についても、メディアは大きく取り上げる。
トヨタに関わる人々が「自らが産業全体の道しるべになる」という自覚を持ったことが、業績回復に結び付いていることは間違いない。