ホンダ・シビック・タイプRプロトタイプ
公開 : 2013.11.28 22:15 更新 : 2017.05.29 19:10
■どんなクルマ?
ホンダ・シビック・タイプRのダイナミクス能力を担当する全てのエンジニアは、一つの同じ目標に向かって動いている。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェのラップタイムにおいて8分を切ることだ。
この“緑の地獄”で8分切りを達成し、量産ハッチバック最速の座を獲得するのであれば、少なくとも8秒を縮めなければならないということだ。シビックのチーフ・エンジニアである蓮子末大に、既に達成済みなのではないか? と尋ねてみたところ、「現状ではお答えできかねますが、予想の範囲内です。」との返答を得た。つまり、このシビック・ハッチバックが伝説のNSX-Rに並び、ニュルブルクリンクにおいてホンダ史上最速のクルマとなる可能性が高いだろう。
シビックは賑わいつつあるホットハッチ・マーケットにただ参戦するだけのクルマではない。エンスージァストたちのもとに、輝く「タイプR」のネームプレートを再び提供する、さらに重要な使命がある。F1から撤退し、NSXやS2000、以前のタイプRを切り捨てた時以来の作品であり、このタイプRが単なる言葉以上のものかどうか確かめることができる最初の実践的な証拠となるのだ。
それは紙上でも、実際に見た後でも同じ感想だ。市場に導入されるおよそ18ヵ月前となったが、それでもホンダにはまだ公開していない手の内がたくさんある。
われわれが知り得たところでは、新しいシビック・タイプRには新開発の2000cc4気筒シングル・ターボ・エンジンが搭載され、公式発表では「276bhp以上」だが、あるエンジニアの話によると、少なくとも300bhpの出力を与えられるという。単純に考えれば、フォード・フォーカスRS、ルノー・メガーヌRS、ヴォグゾール・アストラVXRらを飛び越え、つい最近発表されたVWゴルフRに肩を並べることになる。しかしホンダの目標はそこではなく、彼らはメルセデス・ベンツA45 AMGの存在を認識しており、前輪駆動という制限がありながらその領域に到達しようとしているのだ。
低く、硬く、ワイド化されたシャーシではあるが、スタンダードのシビックと同じ、トーションビーム採用のリア・サスペンションが組み付けられている。ホンダはオプションで用意されるアダプティブ・ダンパーを使用することで、日常的に使える乗り心地と、トップレベルのハンドリングの両立を提供できると主張しているのだ。それらにブレンボ製のブレーキ・システムを収めるために巨大化された(見た目のためではない)19インチのホイールが装着される。また、魅力的なことに現在のトレンドと逆行した6速M/Tとともに登場することが決定しており、パドルシフトはオプションでも用意されない。「その方が楽しいでしょう?」と蓮子氏は簡潔に述べている。
■どんな感じ?
栃木にあるホンダのテストコースで何周か全開走行を行うことができたのだが、スムースなドライ路面において1速、2速の領域でトラクション・コントロールが正確に働くこと確認するに十分な加速を示している。印象的なことに、トルクステアがほとんどゼロに抑えられていた。ただ必然的ではあるが、エンジンはスロットル・レスポンスでもサウンド面でも旧式のNAエンジンには敵わないことも分かっている。それが2.0ℓで300bhpの力を絞り出しながら、公道でも扱いやすく設計されたことへの代償だ。ホンダは正式発表までには改善できると付け加えている。
ハンドリングの評価については判断できる環境になかったが、急角度のバンクがついたカーブを201km/hの速度で駆け抜けられるだけの能力は持っており、公道でも期待できる。ステアリングラックは一際クイックだが神経質さはなく、重さやフィーリングはパーフェクトだ。
■買いか?
開発の最初期としては、シビック・タイプRは非常に有望な船出に思える。現在の姿でもかなり魅力的ではあるのだが、彼らが来年の開発において成すべきことは、更なるパワーアップとボディパネルにアルミ材を使用し軽量化を進めることだ。今回の試乗から、私は愉しく速いホンダが、復讐とともに帰ってきたと言いたい。
(アンドリュー・フランケル)
ホンダ・シビック・タイプRプロトタイプ
価格 | NA |
最高速度 | 257km/h |
0-100km/h加速 | 5.8秒 |
燃費 | NA |
CO2排出量 | NA |
乾燥重量 | 1330kg |
エンジン | 直列4気筒1995cc |
最高出力 | 300bhp/6500rpm |
最大トルク | 40.8kg-m/2000-5500rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |