【ポルシェ・タイカンとの違い】アウディRS eトロン GT プロトタイプへ試乗 最大655ps
公開 : 2020.11.17 10:20
フラットに旋回し、シリアスに速い
2020年の初めに試乗したタイカン・ターボSも、想像を超える乗り心地と洗練度を備えていた。しかしRS eトロン GTの乗り心地は、よりソフトで穏やかな性格付けになっている。恐らく長距離移動では、快適性で勝るだろう。
車外との隔離感も、優秀。運転姿勢も素晴らしい。試乗での唯一の不満は、背もたれの幅が筆者の体型には広すぎた、ということくらい。コーナーを本気で走ったときに、個人的に感じる程度のことだ。
コーナーを曲がると、タイカンとRS eトロン GTとの類似点が見えてくる。アウディもポルシェと同様に、車重は2.3tほどある。
ステアリングは反応が良く、クイック。RS eトロン GTの方が、少し軽く手応えが少ない。引き締まった姿勢制御も見事。フラットにコーナーを回っていく。
グリップも塊のように強力ながら、侵入速度が速すぎた場面では、わずかにアンダーステアが出る。だが、アクセルペダルの踏み込み量で調整できる。後輪操舵の設定にも違和感はない。
旋回時の振る舞いは、自然な軸でノーズが向きを変えていく感覚がある。ショッピングカートのように、不意に向きを変えるのではなく。そしてコーナー出口を目指して、アクセルペダルを踏んでいける。
タイカン・ターボより最高出力は低いものの、RS eトロン GTはシリアスに速い。レスポンスは即時的で、生み出される加速度は、気持ち悪くなる瀬戸際。これ以上の推進力は必要ないと思える。
ブレードランナー風のノイズもカッコいい。マニアックだが、かつてのモーグ・シンセサイザー的なテクノ感は、筆者好みだ。
多様性を不安にさせるタイカンとの類似性
純EVとして、サウンドは大切。しかし、内燃エンジンで得られる音響感覚を、純EVで置き換えることは難しい。RS eトロン GTのサウンドが、読者の背筋をゾクゾクさせるかどうかは、わからない。
RS eトロン GTのプロトタイプを試乗して、アウディのエンブレムを付けたポルシェ・タイカンではないといえるだけの違いを持つことは、確認できた。差は大きくない。でも、体感はできる。
感覚的な濃さや、高速域での完全な落ち着きは、若干犠牲になっている。そのかわり、長距離をより快適に移動できる。
満充電での航続距離は、まだ未公表。シュミッツによれば、400km前後になる見込みだという。最速350kWの急速充電器に対応し、その場合は23分かからずに80%まで充電が可能となる。
英国では、急速充電器の普及はこれから。インフラが改善されるまで、RS eトロン GTをグランドツアラーらしく乗ることは難しいかもしれない。
確かにアウディRS eトロン GTと、ポルシェ・タイカン・ターボとの違いはある。しかし、その差は限定的。類似性を強く感じてしまう。将来の電気自動車は、充分な多様性を備えられるのか、ちょっと不安になるほど。
少なくとも、プロトタイプながら、RS eトロン GTは印象的なパフォーマンスに仕上がっている。2021年春の量産モデルへの試乗を、楽しみにしていたい。高性能EVとして、圧倒的な加速感以外の特徴を備えることを、願っている。
アウディRS eトロン GT プロトタイプのスペック
価格:13万ポンド(1755万円/予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:3.1秒(予想)
航続距離:400km(予想)
CO2排出量:−
乾燥重量:2300kg(予想)
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:93.4kWhリチウムイオン
最高出力:655ps(オーバーブースト時)
最大トルク:84.4kg-m
ギアボックス:−