プジョーRCZ R
公開 : 2013.11.29 23:00 更新 : 2017.05.29 19:01
■どんなクルマ?
プジョーはよほどRCZ Rの性能に自信があるようで、ポルシェ・ケイマンだろうが、フォルクスワーゲン・シロッコRだろうが、人を惹きつける魅力ということなら負けないつもりだ。さもなければ、540万円という値札をつけないだろう。では、この筋肉の鎧をまとった”プジョー版 TT”に有り金をはたいて、いったい何が手に入るのだろう? そもそもそんな価値はあるのだろうか。
ボンネットの中には、RCZ標準モデルに比べて大幅にチューニングされた1.6?ターボが収まる。270psを6000rpmで、33.6kg-mを1900rpmで発する涙もののエンジンは、1355kgの車体を0-100km/h加速、5.9秒で走らせ、リミッター制限のかかる最高速度250km/hまで引っ張る。このスペックを見る限り、期待できそうなクルマだ。たとえエンジンが、公道走行すれすれのチューンが施されていたとしても、直線を走る分にはRCZ Rはどんな相手とも渡り合えるということだ。
足まわりのスペックについても同様に徹底されているようだ。サスペンションは根本的なところは変わっていないが、スプリングはよりハードなものへと変更され、ダンパーは高性能なものへ、スタビライザーはより強力になっている。なんと言ってもフロントに備わる新型のトルセンLSDが一品で、ボンネットにひしめく270頭の荒れ馬が歯止めの利かない走りをしないようにしっかり手綱を握っている。
さらに、車高は10mm下げられ、前後のブレーキディスクは大径化されている。フロントについてはトレッドの拡大と、よりアグレッシブなキャンバー・セッティングが施されている。また、エアロダイナミクス・パーツ、マットブラック塗装のルーフ、クロームメッキ処理された左右2本出しエグゾーストといった装備で、視覚的にも標準モデルのRCZと差別化が図られている。ボディカラーはブラック、レッド、ホワイト、グレーといった4つの特別色から選択できる。
■どんな感じ?
意外なことに、気に入ってしまった。正直なところ、そこまで期待していなかったのである。
1mも動かせば、エンジンや足まわりの強化が感じられる。ステアリングは、標準モデルにはなかった剛性感とダイレクト感があり、ボンネットの中で唸るのが1.6?エンジンであることを考えれば、走りはとても力強い。テストは南フランスの整備の行き届いた道路で行ったが、それを差し引いても乗り心地は非常に快適だった。サスペンションまわりの数々の変更にもかかわらず、このクルマはたちの悪い改造車になっていないのである。
われわれを一番驚かせたのは、走りに関してもきちんと作り込まれていることだった。スロットルを踏み込むと力強く加速し、たまらないエグゾースト・ノートを発する。シフト操作は正確で欠点などなく、ボディがより引き締められたので緻密なコントロールが可能となっている。トルセンLSDは、わずかにトルクステアを出すときもあるが、的確に働いてトラクションを路面に伝えている。
断っておくが、ここで言っているのはポルシェ・ケイマンのようなドライバーとクルマの一体感でもないし、非常にダイナミックなパフォーマンスについて話しているのでもない。それでも、多くを期待していなかった私だが、このRCZ Rのハンドルを握ったら、期待以上の楽しさとスピードを味わえたことを伝えておきたい。
■「買い」か?
プジョーは、RCZ Rの売上を向こう12ヶ月間で300台前後と見積もっている。これは、RCZ全体のおよそ10%に及ぶものだ。しかし、さらに需要があれば柔軟に増産できるとも語っている。
限られた時間のインプレッションではあったが、英国よりもスムーズな道路でテストした限りでは、プジョーは大急ぎで工場スタッフを集めて増産にとりかからなければならないと感じた。それほどRCZ Rは、考えているよりもはるかに優れたクルマなのだ。
(スティーブ・サトクリフ)
プジョーRCZ R
価格 | £31,995(533万円) |
最高速度 | 250km/h |
0-100km/h加速 | 5.9秒 |
燃費 | 15.9km/? |
CO2排出量 | 145g/km |
乾燥重量 | 1355kg |
エンジン | 直列4気筒1598ccターボ |
最高出力 | 266bhp/6000rpm |
最大トルク | 33.6kg-m/1900rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |