【レース屋さん仕立て】特別なSUVとは? 限定導入、ボルボXC60 T8ポールスター・エンジニアードがキレッキレ!
公開 : 2020.11.11 11:50 更新 : 2021.10.11 13:50
キレも伸びも上々、動的質感
少しベージュがかったチャコールのコンビシートに腰を下ろし、アルミの打目模様パネルは同じだがレザーの面積がRデザインよりやや広いかなという印象のインテリアを見回して、アルミのペダルをゆっくりと踏み込む。
電気モーターによる静止時からの駆動感に正直、ノーマルのT8リチャージと違いは感じにくいが、あちらがフワリと動き出すのに対し、こちらはスルッとした感じはする。
2速以上のギアで入ってくることも多いため、ICE側が始動した瞬間の分かりづらさも同じくで、加速の力強さで気づくといった具合だ。
それにしても加速の質がノーマルT8と違う。
加速のツキから伸び、息の長さまで、1.5倍ぐらい分厚い。
電気モーターに加えて、低回転からのターボチャージャー、途中から伸びを加えるスーパーチャージャー、そしてノーマルより15ps/3kg-mほど出力もトルクもました直4と、どれが効いてるのか判別がつきかねるほど、自然で滑らかで力強い。
レスポンスは鋭いが唐突にトルクの山が来ることがなく、ワインディングでも安心して踏める、そんな伸びと余韻を楽しめる加速感なのだ。
SUVをハンドリング・マシン化する意味とは
AWDの恩恵もあるが、おっかなびっくりの危なっかしさより、踏んでいけるという信頼感が優るのも、ブレーキのタッチも秀逸だし、2.1トン超の巨体に対して申し分ない制動力を発揮するがゆえ。
つまり、重量級ボディとパワートレインを受け止めるシャシーも、やはりいい。
ほぼ中立といえる10段戻しのハンドリングは初期アンダーステアこそ出るが、ステアリングを切ってアンギュレーションに入っていく間の姿勢変化が、鮮明に伝わってくる。
だからアンダー気味でも曲がり始めの間合いが掴みやすかった。
試しに帰りの下り道で、フロントだけ4段戻しに締め上げてみた。乗り心地はやや固くなったものの、初期アンダーが消えて明らかにシャシーの応答性が上がった。
こうも顕著な変化が出るとは予想しなかったので、XC60がポールスター・エンジニアードであることの意味に、ようやく合点がいった。
日本導入30台 もう1つの楽しみも
ストリートで純粋にスポーティに走りたいのならS60やV60もあるが、SUVでかくも対話のあるスポーツ・ドライビングを提供するクルマはそもそも多くない。
あまつさえ、シャシー・セッティングを自分好みに変えられる点は、元々の重さがセンシティブに挙動に影響するSUVでは大きなメリットとなる。
実際、2021年のPSEモデルの導入台数は総数65台のうち、XC60が30台、V60が20台、S60が15台となっている。従来のPSEオーナー、つまりSかVの人が、違うボディとしてXC60に移るという楽しみ方も、悪くない。
ちなみにSとVではオーリンズ・ダンパーの22段階減衰力設定は、デフォルトで前6/後9段戻しとなっている。
以前にお伝えした通り、B6 Rデザインのシャシーも素晴らしくキマっている現状のXC60を見ると、XC60 T8 PSEの必要性は「走り」だけでなく、「セッティングを楽しむか否か」だ。
PSEが1024万円なので、B6 Rデザインとの価格差は225万円。
セッティングが面倒くさいと思うタイプは多分、もち腐れるのでお勧めしない。ただ、元バイク乗りで走り屋さん気味といったタイプなら、いい意味でドロ沼にハマれるので、それまた要注意だ。