【詳細データテスト】アルピナB3ツーリング 圧倒的なパフォーマンス パフォーマンスカーでは異例の快適性 アルピナの最高傑作
公開 : 2020.11.14 11:50
走り ★★★★★★★★★★
近年のアルピナ車の走りにおいては、大トルクによる引き出しやすい動力性能ばかりでなく、あまりにも地味なルックスからは思いもよらないようなパフォーマンスの絶対値も魅力のコアとなっている。となれば、知りたいのは新型B3ツーリングがどれほどのタイムをマークするのか、である。
まずは0-97km/hは3.8秒。正真正銘のスーパーカーでも、このレベルに届いたのはそれほど昔のことではない。0-161km/hは8.7秒で、81.7kg-mを絞り出すV8を積んだRS6と比べても、遅れは1秒以内に収まる。最高速度の公称値は、巡航速度で300km/hとされるが、アウトバーンを貸切にでもしなければそれを試すのは難しい。
だが、重要な意味を持つのはそうしたカタログデータではない。3000〜4250rpmで71.3kg-mという最大値もさることながら、5500rpmまで回しても60.8kg-mが出続けているトルクの特性を完全に理解するには、もっとリアルなシチュエーションに当てはまる計測データに目を向ける必要がある。
3速での64-97km/hは1.7秒で、これはポルシェ911カレラSより速い。4速・80-113km/hの2.1秒は、RS6を凌ぐ。5速・97-129km/hは、BMWの現行M5と同じ2.8秒だ。
デフォルトのコンフォートモードで、ZF製ギアボックスがややシフトダウンしたがらないように思うかもしれないが、その理由は簡単だ。必要ないのである。
これはリアルな状況で驚くべき速さをみせる3シリーズだ。そしておそらく、新型M3より全開で走ることを必要としない。
B3ツーリングのデジタル速度計は、数字が急速に跳ね上がっていくが、その能力にただし書きをつけるとすれば、そのデリバリーにブースト感があることだ。トルクの湧き上がりは正確だが、2400〜3000rpmでのそれは非常に急激なのだ。
しかし、全体的にエキサイティングそのもので、それも喜んでキャラクターのうちに数えたいところ。というのも、このMディビジョン由来の3.0Lユニットが全力を発揮しても、トラクションとスタビリティは完全だからだ。それは、路面がドライでも湿っていても変わらない。
ほかにも、ZF製トランスミッションが、このようなクルマに理想的なほど合っているように感じられる。シフトはそつなくクイックで、しかし普通の運転では、万事が期待通りにスムースだ。新型M3が先代モデルのDCTに見切りをつけ、同じテクノロジーを導入したことも、B3に乗ったあとなら驚きはしないはずだ。