【歴史的な傑作】トヨタGRヤリス試乗 海外の評価は? 専用3ドアボディに260ps+四輪駆動 後編
公開 : 2020.11.18 16:50 更新 : 2021.03.05 18:45
歴史的な名車と表現することを躊躇しない
特に印象深かったのが、いつものテストコースで、過剰な上下動の仕草も見られなかった点。同等のフォード・フォーカスでは、抑えきれていない部分だ。
初期の衝撃吸収に優れ、姿勢制御は常に落ち着いている。ドライビングが楽しいだけでなく、実用性の面でも有利だ。
ステアリングのレシオはそれほどクイックではなく、サスペンションのチューニングも穏やかな部類。攻めたホットハッチのように、その場で回転するような旋回の鋭さはない。そのかわり、重みのあるステアリングは、感触的にも安心感にも優れる。
中速コーナーでの敏捷性は見事。ステアリングホイールを回せば、積極的にノーズの向きが変わる。横方向の荷重移動も、明確に伝わってくる。
四輪駆動システムは、スポーツ・モードを選んでも、後輪駆動のようなフィーリングは生まない。パワーをかけても、コーナリング姿勢を直進方向に整える程度。オーバーステア状態にはならない。
それでも、コーナーのエイペックス手前からアクセルを踏んでいける。ブーストが高まり、デフが噛み付くと、かつてのラリーマシンのようにカタパルト発進を決められる。
この価格でこれだけの能力を備える、気持ちがアガるモデルは、極めて珍しい。今回の試乗だけでも、歴史的な名車だと表現することを躊躇しない。
GRヤリスのようなクルマが今後も登場するのなら、トヨタの狙い通り、大きくブランドイメージは変化していくだろう。トヨタの、次章の始まりなのかもしれない。
クルマ好きの気持ちを強く掴むヤリス
英国での価格は安くはない。約3万ポンド(405万円)からのスタートとなり、試乗車のようにサーキット・パッケージを付けると、3万3495ポンド(452万円)まで上昇する。正直、ヤリス・サイズのホットハッチとしては、かなりの金額ではある。
しかしGRヤリスは、高速化されたタダのハッチバックではない。近年では珍しい、特別なボディをまとった本気のパフォーマンス・モデルだ。クルマとの一体感、求められるドライビングスキル、徹底された動的性能は、クルマ好きの気持ちを強く掴むはず。
今後、ライバルとの比較テストも予定はしている。しかし、天候を選ばない手頃な価格のドライバーズカーとして、比較なしでコンパクト・ハッチバック・クラスのチャンピオンに選出して問題ない仕上がりだと思う。
トヨタGRヤリスは、前評判通り、それ以上に素晴らしい。久しぶりに誕生した、見事な傑作だ。
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)のスペック
価格:3万3495ポンド(452万円)
全長:3995mm
全幅:1805mm
全高:1455mm
最高速度:230km/h(リミッター)
0-100km/h加速:5.5秒
燃費:12.1km/L
CO2排出量:186g/km
乾燥重量:1310kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps
最大トルク:36.7kg-m
ギアボックス:6速マニュアル