【F1チャンプが駆ったGTA】アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA 1966年の姿を復元 後編

公開 : 2020.11.29 19:25  更新 : 2020.12.08 08:19

残された過去のレースでのダメージ

「1966年は、ETCCに大金を投じていたアルファ・ロメオにとって重要なシーズンでした。その成功でティーポ33の計画も実行できたのです。そのシーズンが、保存すべきGTAとして特に重要だと考えました」

ボディは地金に戻されると、ブダペストでアンドレア・デ・アダミッチが凹ませたドアの跡など、古い戦いのキズが次々に出てきた。「すべてAR613102固有の歴史なので、消したいとは思いませんでした」

アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA(1966年)
アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA(1966年)

「ドアの内張りを剥がせば、ダメージの跡が見られます。リア回りは波打っています。これは、90Lもある燃料タンクの重さによるもの。ボディシェルが真っ直ぐではないこともわかりました。スウェーデンでの戦いの跡です」

「新しい金属に打ち替えることもできましたが、パネルを叩いての修理を選びました。数ヶ月もかかりました」。マックスが過程を説明する。

ジュリア・スプリントGTAの初期の生産については、謎が多い。「仕上がったジュリアを生産ラインから抜いて、アウトデルタ・チームに運ばれたと考えられてきました。しかし自分は、アウトデルタ内で作られたと信じています」

ボディは、鮮やかなロッソへ再塗装されていない。「塗料の量が少ないレーシングカーのように、くすんだ仕上がりになる特別なスプレーガンを開発しました。ナンバープレートは当時モノをイタリアへ注文し、2年ほど外に放置してエイジングしてあります」

AR613102の車内も、見事なまでにオリジナル。FIAの既定値に合わせて、より深い構造を持つリアシートの構造もそのままだ。

対象的なジュリア・クアドリフォリオGTAm

足もとは、ダンロップ製の14インチ・タイヤと、グレーのカンパニョーロ・ホイールが引き締める。ホイールアーチの隙間を埋め、1966年のGTAらしい好戦的なスタンスに整っている。

マックスは多くのジュリア・スプリントGTAをドライブした経験を持つが、AR613102は唯一無二だと話す。「クルマは活発で、運転がとても楽しい。コーナリングはカミソリのように鋭い。ハンドリングも素晴らしい。想像以上に速く、本当に驚きました」

アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA(1966年)
アルファ・ロメオ・ジュリア・スプリントGTA(1966年)

「排気音が反社会的だったので、サイレンサーを追加しています。印象深かったのがシート。サイドサーポートが弱く、コーナリング中はステアリングホイールにしがみつく必要があります。スパやニュルブルクリンクで何時間もレースしていたなんで、考えられません」

近年になり、アルファ・ロメオはアルファホリックスへこのGTAの貸し出しを頼んだ。新しいジュリア・クアドリフォリオGTAm発表のために。

並んだ2台は、あまりにも違っていた。2.9Lのエンジンで537psを発揮するジュリア・クアドリフォリオGTAm。ジョルジェット・ジウジアーロが描き出した1960年代の小さな美しさと対照的に、巨大で獰猛だった。

ジュリア・クアドリフォリオGTAmは、ニュルブルクリンクで7分39秒のラップタイムを叩き出した。しかし、このジュリア・スプリントGTAも、現役時代は負けない戦いを残している。

アルファ・ロメオという血統は、現代へと受け継がれている。それでも、AR613102のGTAが持つ戦歴は、唯一のもの。ヨッヘン・リントが戦ったレーサーが常にそばにあるとは、羨ましい限りとしかいいようがない。

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