【BMW流FRハンドリング】BMW iX3へ試乗 シングルモーター286ps 航続距離450km
公開 : 2020.11.23 07:20
知的で自然な回生ブレーキ
もう1つ感心したのが、回生ブレーキ。効きの強さには4段階があり、ロー、ミディアム、ハイ、アダプティブの4モードから選べる。
ハイ・モードでは、アクセルペダルの踏み込み量で発進から停止までをまかなう、ワンペダル・ドライブが可能。アクセルを離すと速度は急激に下がり、停止直前までブレーキペダルに触れる必要はない。運動エネルギーを、効率的に電気として蓄えてくれる。
ユニークなのが、アダプティブ・モード。ナビのルートと、ドライバーの運転スタイルをモニタリングし、回生ブレーキの強さを調整してくれる。アクセルペダルを緩めたときに、回生ブレーキで充電するか、抵抗をなくし惰性走行を許すか、自動的に判断してくれる。
こんな技術が裏側で働いているにも関わらず、ブレーキペダルの感触はかなりイイ。踏みごたえがしっかりしていて、調整も簡単。反応が常に一貫している点も、評価できる。
iX3が搭載する電気モーターは、BMWのドイツ・ディンゴルフィング工場で生産される。一方、74kWhのリチウムイオン・バッテリーは、中国のCATL社で製造される。
バッテリーの搭載位置はリアシートと荷室のフロア下。WLTP値で450kmから458kmの航続距離を得ている。
充電は標準でAC 7.4kW、オプションでAC 11.0kWのシステムに対応する。さらにオプションとして、最大DC 350kWまで対応が可能。最短34分で、80%まで充電できる。
BMWらしいハンドリング特性
デュアルモーターの四輪駆動ではなく、シングルモーターの後輪駆動を選んだことで、iX3の前後重量配分は47:53とややリア寄り。そのおかげで、BMWらしいハンドリング特性を得ている。
ステアリングレシオは固定で、適度な重さがある。ドライバーに、運転し始めから操る自信を持たせてくれる。
フロントタイヤにかかる駆動力はなく、リアタイヤへ伝わる電気モーターからの駆動力は、操作に正確。繊細な調整も許してくれる。
市街地では、iX3は非常に運転しやすい。発進時の強力なトルクが、扱いやすさを高めている。小回りも比較的良く、小気味よく交差点で向きを変えてくれる。
そこから郊外の開けた道へ出れば、リア寄りのバランスと、後輪駆動という個性が光りだす。iX3最大の魅力といっていいだろう。滑らかな操縦性は、現在手に入る純EVのSUVとして、最もドライバーへの訴求力が高いと思う。
動的性能のレベルとしては、軽くない車重が制限をかけている。それでも、ドライバーを充足させてくれる能力に不足はない。
BMWによると、iX3の車高は標準のX3と比較して20mm低く、バッテリー搭載位置が影響して重心高は70mmも低いという。スピードを保ってコーナー侵入すると、ボディを大きく傾けることなく、穏やかなオーバーステアが待っている。
テールが外へ流れるか、という場面でDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)が介入し、鎮圧。個別にブレーキを制御し、ライン内に留めてくれる。