【コロナが成長を促した?】中国の自動車産業、急成長の理由 世界を飲み込む巨額の富

公開 : 2020.11.28 19:05

次々と台頭する新興メーカー

反面、中国の嗜好に依存するリスクも大きい。PSAグループは目も当てられないほどの悲惨な低迷が続いている。2014年には、合弁会社との提携により70万台以上の登録台数を記録し、母国フランスでの販売台数をも上回ったPSA。

製造工場やオンライン化への多額の投資を行っていたが、ドイツと日本のライバルがその優位性を奪ってしまった。中国企業も安くて有能な代替品を続々と展開しているため、売上高は伸びていない。今年、中国におけるPSAの売上は5万台を下回ると予想される。

Lynk & Co 01
Lynk & Co 01    Lynk & Co

現地メーカーは、低~高価格帯の幅広い分野で成長を続けており、安価で航続距離の長いEVの導入により欧米ブランドを追い抜こうとしている。

最近中国で最も売れているEVは、2ドアで3800ポンド(52万円)の宏光MINI EVで、テスラモデル3を抜いている。また、ニューヨーク証券取引所に上場している高級EVメーカーのニオは、2018年から評価額が600%近く上昇している。

今年3月、ニオの欧州担当副社長であるホイ・チャンはAUTOCARに対して次のように語った。

「わたし達は、ロックダウンの下でも懸命に働いてきました。たまっている需要があると考えたためです」

国内で成長し、世界へ羽ばたく

世界的な不況の中では、例え中国といえども完全な景気回復は不可能に近い。

しかし、比較的好調な経済状況により、中国ブランドのグローバル展開を加速させ(例えば、長安、ニオ、シャオペンなどはすべて欧州を視野に入れている)、中国企業が苦戦している欧米ブランドに投資・買収する可能性を高めるだろうとの見方さえある。

アストン マーティン・ヴァンテージ・ロードスター
アストン マーティンヴァンテージロードスター    アストン マーティン

ロータス、Lynk & Co、ポールスターボルボの親会社であり、メルセデス、プロトン、スマートの共同オーナーであるジーリーは、ローレンス・ストロールより前にアストン マーティンへの投資を試みていた。最近、メルセデスが新たにアストン マーティンへの出資を増やしたことで、再び関心を高めるのではないかとの憶測が広がっている。

「ニオの市場評価は今やGMやBMWなどを凌駕している」とルッソは言う。

「次の戦場は、スマートでコネクテッドなEVです。中国の最先端の自動車メーカーは、そこに優位性を見出しています。世界最大の自動車市場で事業を展開しているため、グローバル化する前に国内で規模と収益を迅速に成長させることができます。成功の要因はそこにあります」

パンデミックの結末を予測することは不可能だが、新型コロナウイルス感染症がいかに中国の自動車産業を活性化させ、世界的権威を強めたかは明らかだ。モンゴルの羊は中国の食卓に届けられようとしているが、最も喜んでいるのは誰なのか、それは言うまでもない。

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