【燃料タンクがボディ】ソーキャル・スピードショップ・ベリータンク・レイクスター 後編

公開 : 2020.12.12 16:50  更新 : 2022.08.08 07:35

ヘミエンジンを載せたレイ・ブラウンのマシン

ソーキャル・スピードショップは、クラス優勝に満足していなかった。栄光は、常に新記録の樹立。クラスCには強敵がいた。「レイ・ブラウンのベリータンクが立ちはだかります。積んでいるのは、新しいクライスラー・ヘミエンジン」

「半球型の燃焼室の強さは、ホッドロッド界で知らない人はいません。われわれのチームのエンジンは、充分な呼吸のできない古いフラットヘッド。クライスラーのエンジンが、未来だと知っていました」

ソーキャル・スピードショップ・ベリータンク・レイクスター(1952年)
ソーキャル・スピードショップ・ベリータンク・レイクスター(1952年)

「幸運だったのは、ヘミエンジンがレイクスターに載った最初の年だったこと。まだ完全にはポテンシャルを引き出せておらず、われわれにもチャンスがありました」

「レコードランは、クライド・スタディと2人。往復の行きはわたしで、帰りは彼がドライブです。お互い、緊張していました」。決着が付くのは最終日。コースレコードをかけて、1台ずつ往復を走る。

4日間で2チームが競い合い、パフォーマンスの限界領域を高めていった。金曜日、シディアスたちは片道だけだが、198.34mph(319.2km/h)を記録。土曜日はレイ・ブラウンのマシンが平均197.88mph(318.46km/h)を叩き出し、応戦した。

記録を打ち立てるための、最終日のレコードラン。フラットヘッドのエンジンを限界まで高めるべく、ニトロメタンの投与量を40:60に増やしていた。エンジンはこの濃度に耐え、逆風の中で行きの最速タイムを記録。帰りの速度にすべてがかかる。

「日曜日のレコードランを走り終えると、達成感で幸せな気持ちになりました。1週間が終わった。帰りも記録を残せれば、すべてが報われる、と思いながらベリータンクを降りました」

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでの受賞

「クライドが運転する番になり、彼が不安そうにいうんです。緊張しすぎて運転できない。運転をお願いしたい、と。少しからかうような素振りもしましたが、結局わたしがクルマに戻りました」

「そこでバルブが吹き飛びました」。シディアスが笑う。「フラットヘッド・エンジンの問題の1つ。バルブが高温になり、変形するんです。記録は消えました。シーズン最後のボンネビル・ソルトフラッツでのランでした」

ソーキャル・スピードショップ・ベリータンク・レイクスター(1952年)
ソーキャル・スピードショップ・ベリータンク・レイクスター(1952年)

「でも、6つの賞を受賞したんですよ。速度記録の更新は2つ。優勝は3度。ベスト・アピールカー&クルーにも選ばれました」

2020年のシディアスは、御年98歳。「ブルース・マイヤーが近年、ピアソン・ブラザーズ・クーペを復活させ、ボンネビルを走りました。カーコレクターの間で、ホッドロッドに関心を集めるきっかけになりましたね」

「クーペが成功を収めると、彼はベリータンクを探し始めました。わたしは保管場所を知っていたので、一緒に向かい、山の工房へ運びました。彼がピート・シャプリスと一緒に、クルマをレストアしている場所です」

「ピートがクルマの仕事を進めるのを眺めつつ、記憶を辿りながら手伝いました。ブルースとピートがクルマを直していく様子を見るのは、素晴らしい時間でした」。ソーキャル・スピードショップのベリータンク・レイクスターは、美しく現代によみがえった。

「見事に、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスで受賞。感無量ですよ。ベリータンクでの走りは圧巻でした。今は眺めて、その美しさを楽しめる存在でもあります。このクルマだけの個性ですね」

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