【詳細データテスト】アウディS3スポーツバック ニュートラルなハンドリング 過激すぎない速さ 乗り心地と質感は改善の余地あり
公開 : 2020.11.28 11:50 更新 : 2020.12.05 00:40
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
4本出しエキゾーストを備え、派手なオプションペイントを用意するS3は、どうみても控えめとは表現できない。とはいえ、それほどアグレッシブなスタイリングではなく、ベースモデルのA3、とくにSラインと比べて、見た目の差は大きくない。
鋭い観察眼の持ち主だけがボンネットの下に詰め込まれた先進技術に気づくというのは、1984年にもあったことだ。そう、あのスポーツクワトロを思い出させる。
だが、上位モデルに限らず、どのA3にもアウディの多ければ多いほうがいい的なアプローチを示すハニカムグリルと、満載された後付け感のあるトリムは付いてきてしまうのだが。結果として、S3には好ましい緻密さも、はっきりわかるおもしろみもないと、われわれは感じた。
スティール素材のボディは、スポーツバックとセダンが用意される。その下にあるのは、よく見知ったメカニズムだ。フォルクスワーゲングループで広く使われるエンジンとプラットフォームの組み合わせ、ということである。
MQBプラットフォームをベースに、2.0L直4ターボのEA888を搭載し、先代モデルと同じ310psと40.8kg-mを発生する。エンジンとダイレクトに接続されたトランスミッションは7速の、SトロニックことDCTで、これも先代と変わらないが、スロットルオフ時にクラッチを切って惰性走行できる機能が加わった。付け加えるなら、この4代目はMTが設定されない初のS3だ。
後輪への駆動力分配を司るセンターデフも、おなじみの電子制御多板クラッチ式。ただし、クラッチプレートは軽量化され、作動スピードが速くなった。その制御は、新採用のモジュラー・ダイナミック・ハンドリング・コントロールシステムが行う。
このシステムは、主にステアリング入力とESCセンサーの情報を用い、またオプションのアダプティブダンパー装着車ではそのデータも加えて、S3のアキュラシーや俊敏なフィールを高める。
残念ながら、テスト車はアダプティブダンパー非装着車で、標準的なA3より車高を15mm下げるパッシブダンパーを備える仕様だった。とはいえ、どちらのダンパーを選んでも、駆動系はトルクのすべてを後輪に送ることが可能だ。
ブレーキを使ったトルクベクタリングも備わる。コーナリング時に内輪側の回転を制限して、アンダーステアを抑えるデバイスだ。
プラットフォームは、先ごろ発表されたばかりのゴルフRと同じMQBで、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクのセットアップを採用する。
アウディでは新型の電動ブレーキブースターを採用し、既存のものより作動が早いと謳う。ブレーキディスクはエンジンルームを通過してきたエアで冷却する方式だが、これはアンダーボディのダクトから走行風を引き込むよりドラッグを抑えられるという。
タイヤサイズは、新型でもこれまで通りの225/40R18が標準装備。テスト車には、オプションの235/35R19が装着されていた。