【詳細データテスト】アウディS3スポーツバック ニュートラルなハンドリング 過激すぎない速さ 乗り心地と質感は改善の余地あり

公開 : 2020.11.28 11:50  更新 : 2020.12.05 00:40

走り ★★★★★★★★★☆

パフォーマンス、というものについての意見には、多少なりとも個人差があるだろう。われわれの中でも、ほどほどの加速が続くことや不合理さがないことを望むものもいれば、合法的な速さよりも0-100km/h加速が5秒を切ることこそ正義と信じ続けてきたものもいる。

いずれにせよ、2名乗車+満タンでも発進から4.8秒で97km/hに達するS3は、客観的にみてもかなりの速さだ。ホンダシビック・タイプRのような、前輪駆動最速レベルのホットハッチを優に凌ぐ。

ターボが効いてからのパワーとトルクは強力で、発生域も広いのだが、エキサイティングな性格ではない。ブレーキもフィールはいいが、重量がかさむこともあって、制動性能は期待したほどではなかった。
ターボが効いてからのパワーとトルクは強力で、発生域も広いのだが、エキサイティングな性格ではない。ブレーキもフィールはいいが、重量がかさむこともあって、制動性能は期待したほどではなかった。    OLGUN KORDAL

ゼロヨンのタイムは13.4秒で、こちらはフォード・フォーカスRSやメルセデスAMGの初代A45といった、最近まで現役だった4WDメガハッチ以上だ。

トランスミッションのわずかなスリップさえなければ、このS3はさらに速くなれたはずだ。おそらくそれは破損を防ぐための保険だろうが、2組あるうちの第1クラッチは、4000rpm付近を使ったローンチコントロールでのスタート時にやや滑るのだ。

それを除けば、トラクションや、ピッチとスクオットへの耐性は抜群にいい。総じてこのS3は、なかなかのやり手だという印象を与えるクルマだ。

では、エキサイティングなクルマかというと、その点ではそれほどではない。2.0Lターボエンジンが確実にそうした数字を生み出すさまは、テスター陣にはおなじみのそれだった。

アウディが設計したEA888ユニットは、フォルクスワーゲンをはじめセアトスコダも含めたグループ内のブランドが、さまざまな仕様で10年以上使い続けてきた。その中でも、このS3のフィールは慣れ親しんだもののひとつだ。

ターボチャージャーは2000rpmで唐突に効きはじめ、そこからのパワーとトルクは均一で、エンドレスに思えるほど広い回転域で非常に実用的なデリバリーをみせる。ただし、徐々に盛り上がっていくような演出はない。ギアボックスもまた、滑らかだが夢中になれるような感覚はない。とりわけパドルシフトでは、手応えが感じられない。

いっぽう、新型の電動ブースターを得たブレーキは、驚くほどナチュラルなフィールで、これまでのアウディには期待しなかったほどの踏みごたえがある。それでも、制動性能に関しては、もっと軽量な前輪駆動のホットハッチのようにはいかない。

エンジンのサウンドアクチュエーターも、賛否が分かれるところだろう。コンフォートモードでは、キャビンは静かすぎるくらいだが、ダイナミックモードに切り替えると唸りがやや強調され、スポーツモデルらしさを味わせてくれる。とはいえ、エンジンの実質的な部分に変化はないのだが。

燃費については、ツーリング時で13.8km/Lをマークした。悪くない数字だが、特筆すべきほどではない。問題は車両重量だ。5ドアで2組のクラッチと4本のドライブシャフトを備えるS3は、1500kgを優に超えるのだ。

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