【992型をピュアにする7速MT】ポルシェ911カレラS マニュアルへ試乗 PDKより35kg軽量
公開 : 2020.12.02 10:25
911の一部になったような一体感
右前側に飛び出た7速目は、従来より楽につながる。1000rpmプラス程度の低い回転数で、65km/h前後のクルージングを穏やかに味わえる。ロードノイズは、大きめだが。
重すぎないクラッチの操作も、運転を楽しくする要素。渋滞時でも、左足が痛くなることはないだろう。漸進的なつながりは、スムーズなシフトアップを促してくれるようだ。
エンジンやトランスミッション、速度などの状況を判断し、完璧なシフトダウンをサポートしてくれるレブマッチ機能も備わる。ペダルレイアウトは素晴らしく、機能をオフにして、ヒール&トウで回転数を合わせることも造作ない。
ドライバー自ら変速することで、911の魅力が際立つ。ドライバーとの強い一体感は、まるで911の一部になったようですらある。PDK版では味わえない体験だ。
MTなら、ツインターボで加給されるフラット6の輝きを、より存分に引き出せる。滑らかなPDKによって、トルク感が濁されることもない。常に最適なタイミングで、最適なギアを選べる。
ダイレクトなパワーが控えているから、マニュアルなら理想より1・2段高めのギアでも気持ちよく走れる。1500rpmからブースト圧の高まりを感じられるが、2000rpmを超えれば充分に力強い。
変速のたびに、コンプレッサーとウェストゲートからの高音域が、スポーツエグゾーストからの中音域に重なる。MTでも992型は間違いなく速い。
それ以外の部分は、基本的に同じ。洗練されたデザインの911だ。
リアエンジンというレイアウトを味わう
先代よりボディは大きくなっているが、ライバルと比べればまだコンパクト。運転席からの視認性は良好で、サイズ感はつかみやすい。
ステアリングのレシオ設定も素晴らしく、レスポンスと滑らかさを両立。狙った通りに911を操れる。リアタイヤにぶら下がる質量を考えれば、コーナリング時のバランスにも深く感心する。
ステアリングホイールを握る指先と、シートに収まる腰まわりから、クルマの動きを正確に感じ取れることも見事。グリップの限界に迫り、そのままテールスライドへ持ち込む自信を与えてくれる。
知的なスタビリティ・コントロールは、コーナー出口でLSDを有効に機能させるだけの、自由度も許している。スロットルステアによる制御も、ドライバーの技術次第だ。
スポーツ・モードを選ぶとサスペンションは明確に硬くなり、ボディの動きも引き締められる。それでいて、不快に感じさせないだけの落ち着きも持ち合わせている。
しかし筆者は、コンフォート・モードを選んだ方が、より楽しいと感じた。低速域で乗り心地にしなやかさが増すだけではない。姿勢制御がやや緩くなることで、リアエンジンというレイアウトのフィーリングを、感じ取りやすくなる。
中速コーナーの途中でアクセルペダルを緩めると、質量の大きいリアが反応。コーナー出口に向けてノーズの向きを整えれば、脱出加速への準備は完了だ。