【熱々のクロスオーバー】フォード・プーマSTへ試乗 200psに6速MT クワイフ製LSD
公開 : 2020.12.06 10:25
気がつけば走りに夢中になってしまう
フィエスタSTではオプションで18インチ・ホイールとなるが、プーマSTは標準で19インチ。その走り味は、少々大きすぎるホイールを履いたハッチバック、といった感覚が伴っていた。
ステアリングは、ダイレクトでレスポンシブ。速いフォードの基準でいっても鋭い。ステアリングホイールの操舵感は重く、コーナー出口でアクセルを踏み込むと、セルフセンタリングの傾向が強い。しかし、路面の傾きや起伏にも過敏だ。
大径のホイールを履かせるために、オフセット値はフィエスタSTとは大きく異なっているはず。パワーステアリングに調整を受けているというが、大径化による悪影響を完全に消すことはできなかったのだろう。
乗り心地も、低速域で少し角が立つ印象。それでも速度が増すほどに、ダンパーの特性と路面との入力がバランスし、滑らかになっていく。フィエスタST以上に、マナーが良くなる。
低速域の乗り心地を気にせず、ステアリングホイールをしっかり握ってさえいれば、軽快な身のこなしの操縦性が楽しめる。横方向の姿勢制御も良好で、旋回性はシャープ。
1.5L 3気筒ターボエンジンは高回転域まで軽快に吹け上がる。走りの主役となるシャシーの優れた実力を引き出すのに、充分なパワーがある。
リアタイヤのグリップ限界は、若干フィエスタSTより劣るようだが、バランスは優れている。オプションのクワイフ製LSDを組むことでトラクションが増し、さらにドライビングの一体感を味わえる。気がつけば、夢中になってしまうこと請け合いだ。
ヤワではないSTのクロスオーバー
ただしこのエンジンは、クラス最良というわけではない。高めのギアに入れてしまうと、少しエネルギッシュさに欠けてしまう。フォルクスワーゲンTロック RやアウディQ2など、もっとパワフルさで勝るライバル・モデルは存在する。
実用性に優れていても、車高の高い熱々のホットハッチ的モデルを、日常的に乗りたいと感じる人はどれだけいるだろうか。プーマSTは、典型的なクロスオーバー・ハッチバックとは違うユーザー層向けのモデルだと、フォードも認めている。
「STブランドのクロスオーバーを作りました。でも、ヤワにはしていませんよ」。そんなフォードによる意思が、伝わってくるようだ。
フォード・プーマSTは間違いなく楽しい。それ以上に、フォードの気概に好感を受けてしまった。
フォード・プーマST(欧州仕様)のスペック
価格:2万9445ポンド(397万円)
全長:4207mm(標準プーマ)
全幅:1805mm(標準プーマ)
全高:1537mm(標準プーマ)
最高速度:220km/h
0-100km/h加速:6.7秒
燃費:14.5km/L
CO2排出量:155g/km
車両重量:1283kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:200ps
最大トルク:32.5kg-m
ギアボックス:6速マニュアル