【420psでレストモッド】ボルボP1800シアンに試乗 カーボンボディに4発ターボ 前編
公開 : 2020.12.12 10:25 更新 : 2022.04.14 16:58
1960年代のボルボを象徴するモデルといえば、P1800。シアン・レーシングの手による徹底的なチューニングにより、420psを得て復活を果たしました。その走りっぷりに、英国編集部も強く惹き込まれたようです。
ボディはほぼすべてカーボンファイバー製
今日試乗したのは、ボルボP1800に見えるクルマ。ルーフのピラー回りやハンド・ブレーキのレバー、ボンネットのメカニズム、ワイパーなどは、基本的にオリジナルのP1800と同じもの。でも、共通する部品はそれだけ。
古い飛行機のレストアを専門に手掛ける職人たちは、池に沈んだ飛行機を引き上げ、残ったわずかな構造や部品を頼りにその飛行機を復元する。このボルボP1800シアンは、大雑把に、それに近い手間がかけられている。
スウェーデンのヨーテボリを拠点とする、シアン・レーシング社。もとはポールスター・レーシングという名前で、ボルボがポールスターというブランド名を展開するきっかけとなった、レーシングチームだ。
現在は、ジーリー・ホールディングスの公式モータースポーツ・パートナーだ。2017年の世界ツーリングカー選手権(WTCC)では、ボルボS60のマシンで優勝。2018年以降は、世界ツーリングカー・カップ(WTCR)にリンク&コーの03で参戦している。
ポールスター・レーシング時代は、TWRが制作した850のツーリングカーでレースを戦っていた過去もある。2017年以降は、ツーリングカーの開発のため、シアン・レーシングでは60名ほどのエンジニアが働いている。
このボルボP1800シアンは、2シーターでフロントエンジンの小さなクーペ。彼らは、ずっとボルボP1800のレストモッドというアイデアを温めていたようだ。
エンジンはボルボ最新の2.0L 4気筒ガソリン
ボディはほとんどがカーボンファイバー製で、フロア周りは高張力鋼板で組み直されている。すべてが強固に結合され、P1800の現役時代では想像し得なかったボディ剛性を獲得している。
車内にはロールケージが組まれているが、シャシーはパイプを組んだスペースフレームではない。ボンネットを開けても、構造用のシートメタルが見える程度。
ドライブトレインは、純EVのドライブトレインの利用から、古いボルボの5気筒エンジンを復活させるまで、いくつかの選択肢があった。結果として選ばれたのは、ボルボ製の最新2.0L 4気筒ガソリン・ユニット。
S60に搭載され、レースにも出ているエンジンだ。量産モデルとして、ターボとスーパーチャージャーで過給し、400ps以上を引き出せる堅牢さも備えている。
今回のボルボP1800シアンの場合、スーパーチャージャーは積まれず、ターボチャージャーの位置はエンジンルームの下の方。ボンネットを開いても補機類など隠れ、見える位置にターボはない。一見すると、年代物のツインカムユニットにも見えるから面白い。
トランスミッションは、オーストラリアのホリンジャー社が生み出した、5速MT。ドライバーズカーとして、最高の選択といっていい。LSDを介して、後輪を駆動する。
サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式。パワーステアリングは付くものの、アンチロック・ブレーキやトラクション・コントロールなどは一切ない。