自然吸気のフィーリングに近づけたい

車重は990kg。前後の重量配分は、47：53。その軽さにも関わらず、フロントタイヤは245/40のR18と、かなり太い。

ステアリングラックのレシオはクイックで、ステアリングホイールはモモ社製の小径なもの。アシストなしでは重すぎると、シアン・レーシングは判断したのだろう。もちろん、オリジナルのP1800は、こんなに太いタイヤを履いていなかった。

7000rpmで420psを叩き出す4気筒ターボエンジンも、オリジナルのボルボには載っていなかった。最大トルクは、46.3kg-m/6000rpmもある。レブリミットは7700rpmだ。

シアンで自動車部門のゼネラルマネージャーを務めるハンス・ボースに話を聞いた。「できるだけ自然吸気のフィーリングに近づけたいと考えました。5000rpmまで回して、速いと感じられるエンジンです。そして、さらに吹け上がります」

おそらく、読者の多くが運転したいと思うクルマだろう。アルファ・ロメオの専門チューナー、アルファホリックス社が生み出す、GTA-Rと同系列のクルマに筆者は思える。

ベースのジュリア・スプリントGTAは徹底的に裸にされ、特段の注意と精度で、オリジナル以上の状態にリビルドされる。そこに、気高いエンジンが収まる。

筆者は、2019年にアルファホリックスのGTA-Rをドライブし、とても気に入った。今回のP1800シアンはどうだろう。ボースは、両方を運転したことのある人は初めてだろう、と話す。

質感の高い車内に、快適な運転姿勢

ドアを開き、ロールケージのパイプを超え、深くえぐられたシートへ腰を下ろす。サポート性は非常に高く、運転姿勢は快適だ。ステアリングホイールの位置調整はできないようだが、問題はない。

シートも素晴らしい。シフトレバーがドライバーの側まで伸びている。

車内の組み立て品質や仕立ては、驚くほどに高い。レザーには美しいステッチが入り、ファブリックの質感もいい。ダッシュボードには、トグルスイッチとメーターが整然とシンプルに並んでいる。

レーシングチームだけあって、どこに何を配置すべきかを熟知している。運転に集中している状態でも、見たい情報がすぐに目に入る。

クラシカルな小さなキーをひねると、洗練されたアイドリングでエンジンが目を覚ます。だが、サウンドはかなり大きい。ここまでは想定の範囲内。珍しいところはない。

ペダル間隔や高さ、踏んだ時の重み付けも完璧。昔のように、ヘッドライトをハイビームに切り替えるスイッチ付きの、フットレストもある。

シフトレバーを掴んで1速へ入れる。スロトークは長い。重み付けは程よく、高い精度が伝わる滑らかさで、スロットに収まる。あまりに心地よく、何度か上下に動かしてしまった。特別なP1800だと、訴えているようだ。

リアミラーはルーフ側ではなく、ダッシュボードの上。後ろの様子を確認して、クルマをスタートさせた。

この続きは後編にて。

画像　P1800シアン　911やEタイプもレストモッド　全57枚