【420psでレストモッド】ボルボP1800シアンに試乗 カーボンボディに4発ターボ 後編
公開 : 2020.12.12 18:25 更新 : 2022.04.14 16:58
1960年代のボルボを象徴するモデルといえば、P1800。シアン・レーシングの手による徹底的なチューニングにより、420psを得て復活を果たしました。その走りっぷりに、英国編集部も強く惹き込まれたようです。
あまりにも素晴らしいドライビング体験
ボルボP1800シアンの運転に、難しいところはない。足回りは硬いが、辛いほどではない。姿勢制御も素晴らしい。何より軽いおかげだろう。シャシーがねじれるような感覚も、一切ない。
全幅は1748mm。オーバーフェンダーが付いているから、標準のボルボP1800より50mmほど幅が広い。それでも、現代ではとてもコンパクト。全長は4203mmだけだ。
寸法を比べると、ケーターハム・スーパーセブンよりやや長く、幅が狭い。運転の質感は、もちろん違う。
ステアリングホイールの操舵感は、軽すぎず重すぎず。極めて正確で、キックバックは印象的なほどにない。コーナリング中に負荷が増えていっても、重さの変化は小さい。とにかく終始滑らかだ。
ゼネラルマネージャーのボースによれば、ステアリングの調整はまだ完璧ではないという。充分に好印象だったが、もう少し遠隔感を薄くし、フィーリングを濃くした方が良いと思う。
でもそれは、重箱の隅をつつくようなこと。ドライビング体験は、あまりにも素晴らしい。強く惹き込まれてしまう。
エンジンは騒がしい。トランスミッションからも、メカの唸る音が響いてくる。3000rpmから4000rpmで回していると、本当に420psもあるのか少し疑問を感じる。これこそ、P1800シアンの味付けの妙。
ノイズの高まりで、3速に入れたいところだが、2足に留めておく。ポルシェ・ケイマンGT4のように。そのまま回転数を上昇させれば、真のパワーが見えてくる。
見た目と裏腹にモダンな走り
シャシーはグリップ力に優れ、とても落ち着きがある。その高いバランスが、420psをバックアップしてくれる。
まとまりのあるシャシーと滑らかなステアリングに、気持良いトランスミッション。シフトレバーは時々振動するものの、上下の動きは本当にスムーズ。ここまで変速に楽しさを覚えたのは、いつぶりだろうか。
ドライビング体験の印象は、見た目と裏腹にかなりモダン。アリエル・アトムやロータス・エリーゼに近いと感じた。
アルファホリックスのGTA-Rの方が、もっと楽しかったとも思うけれど、比較はしたくない。GTA-Rは、この手のレストモッド・マシンとして、筆者が初めて運転したクルマだった。2番目より初体験の記憶の方が、大体は強烈に残るものだ。
少し防音性を高め、ダンパーのしなやかさを増せば、P1800シアンは見事なグランドツアラーになるだろう。GTA-Rには、少し難しい。
生産台数はとても限られている。シアン・レーシング社によれば、年間の生産台数は10台程度。気になる価格だが、英国では37万9000ポンド(5116万円)になってしまうという。
これだけ他に類を見ない内容を持つ、ボルボP1800シアン。ほかのモデルと比較することも難しい。
筆者としては、アルファホリックスのGTA-Rと、ボルボP1800シアンの両方をガレージに収めたい。その存在自体が素晴らしい。彼らの仕事に感服だ。