【フェラーリF40売却も……】なぜF1参戦は、こんなにお金がかかるのか 「持ち込み資金」も定着
公開 : 2020.12.08 10:45
ドライバー側がチームに資金持ち込む
世界最高峰のモータースポーツに参戦するのだから、契約金はとてつもなく高額だ。
実績のあるトップF1ドライバーは年収数十億円となり、バスケットのNBA、野球のメジャーリーグ、ゴルフのPGAなど、世界トップスポーツ選手と肩を並べる資産を得る。
一方で、F1へステップアップする、また中位以下のチームに所属する場合、ドライバー側がチームにスポンサー資金を持ち込むというスタイルが定着している。
そもそも、レーシングチームという事業は、レーシングマシンの研究/開発/製造、そして各地を転戦しながらの整備/レース参戦が支出の主体となる。
その費用を捻出するため、企業の広告宣伝に対する協賛金を得ることが主体だ。
そのため、ドライバーがスポンサーを連れてくるという発想が成立してしまう。
副業的には、レースで開発した技術を他の事業者に販売すること。また、衣料品などマーチャンダイズによる利益もあるが、収入の中での比率は低いのが一般的だ。
また、F1などフォーミュラカーで大きな支出となるのが、エンジンだ。
例えば、ホンダの場合、F1エンジン開発に少なくとも年間1000億円以上がかかっているとみられる。
そのため多くのレーシングチーム自社開発ではなく、エンジン供給という協賛を自動車メーカーから受ける。
モータースポーツの未来 経済に左右
F1まで辿り着くには、親の援助による自己資金であれ、自動車メーカー各社がおこなっている若手ドライバー育成プログラムによるステップアップ制度であり、かかる費用は庶民感覚でいえば莫大な額である。
そこまでしても、世界最高峰レースで戦いたいという純粋な気持ち、また地位/名誉やトップチームにおける高収入を得たいという人としてごく自然な欲求から、なんとしても資金調達して一歩でもF1を目指したいという若者は世界各地に大勢いる。
一方で、今回のコロナ禍でも顕著になったように、F1を含めたレース関連事業者の事業基盤は脆弱だ。
生き残りをかけて、大量解雇をおこなったレース関連事業者が多い。
過去を振り返っても、60年代高度成長期にレースは世界的に盛り上がったが、70年代のマスキー法などの排ガス規制やオイルショックによって、レース業界の勢いは一気になくなった。
日本でのバブル期、またアメリカでの90年代ITバブル期の後も、多くのレース事業者が姿を消した。
モータースポーツは経済動向に大きく左右されることは明白だ。
ホンダは「2050年のカーボンニュートラルを目指す」として、F1から事実上、完全撤退を表明した。
電動化、自動運転化、コネクテッド化が進む自動車産業界において、これからのモータースポーツはどうなっていくのだろうか?