【どこか遠い世界?】いまEV(電気自動車)に乗るってどうなのか メルセデス・ベンツEQC試乗記

公開 : 2021.01.01 17:45  更新 : 2021.10.09 22:33

ピュアEV良くも悪くも純水のごとし

だが結局のところ、あなたがもし明日から急に、EQC1台で日常生活を送らなければならないとしたら、気になるのは航続距離や充電ポイントといった部分ではないだろうか?

EQCのネーミングの末尾につく400の数字は2個モーターの総出力(408ps)を意味している。そして航続距離もWLTC値で400kmとなっている。

メルセデス・ベンツEQC 400
メルセデス・ベンツEQC 400

だがカタログ燃費を真に受けるクルマ好きがいないように、EQCの実際の航続距離は400kmに満たない。

だから408psの加速を存分に味わって、航続距離の短縮に努めるオーナーはいないだろう。

EV特有のシフトチェンジを含まないシームレスな加速は、最初に試乗する時には加速Gの強さと静けさの同居が物珍しく感じられるはずだ。

けれど回転の上昇とともに高まるエグゾーストノートと体感加速が見事にシンクロするスポーティなガソリンエンジンのような中毒性は全くないといえる。

ピュアEVは飲み物に例えると純水に近いのだ。

生活必需だが、そこに大きな感動はない。近所のアシとして常用するにはクセが強すぎるスポーティな内燃機関はビールか、エナジードリンクか?

結局のところクルマ好きは、例えそれがポルシェタイカンでも、EV1台だけでは生活できないだろう。

余裕がある人は、ぜひ!

ちなみに航続距離に関しては同じクラスのライバルもだいたい400kmあたりで落ち着いている。

現状、日本におけるピュアEVはどこまで走れるかではなく、ストレスなく使用できるかという点が最重要なのである。

メルセデス・ベンツEQC 400
メルセデス・ベンツEQC 400

例えば東京都内に住んでいる家族が週末に八ヶ岳までドライブに行くとしよう。

片道の走行距離が230kmだとすると、自宅でフル充電しただけでは往復できない。

できればレストランやホテルにステイしている最中に充電してしまいたいが、そんなにうまくコトは運ばないだろう。

「だったら充電設備がある場所に目的地を変更しよう」と思える人はかなりの楽天家だろう。クルマの都合を最優先するなんて、ガソリン車で何不自由ない暮らしを送っている現代人には承服しがたいはずだ。

では2021年が目前に迫った今、ピュアEVは時期尚早なのかというと、そうとも言いきれない。

EQCで片道100km程度のクルマ通勤をこなしつつ、週末は空冷ポルシェで山道を満喫する。カーボンニュートラルではないけれどクルマ生活にメリハリがあって、2020年代の知的なクルマ好きの匂いがプンプンするではないか。

ともあれEQCのようなクルマは時間とお金と環境と、まあ全てにおいて余裕がある人のものだと思う。

そういった人が、モビリティの未来を切り開いていくのだ。

メルセデス・ベンツEQC 400 4マティックのスペック

価格:1080万円
全長:4770mm
全幅:1925mm
全高:1625mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
航続距離:400km
CO2排出量:-
車両重量:2500kg
パワートレイン:非同期モーター2基
バッテリー種類:リチウムイオン
バッテリー容量:80kWh
最高出力:408ps
最大トルク:78.0kg-m
航続可能距離(WLTC):400km
充電時間(普通充電):約13時間
充電時間(急速充電):約180分

メルセデス・ベンツEQC 400
メルセデス・ベンツEQC 400

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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