【ラリーウエポン5台揃い踏み】フォード・エスコート ツインカムからRSコスワースまで 後編
公開 : 2020.12.27 20:25
手頃な価格と優れた性能を、高次元でバランスさせてきたエスコート。初代のツインカムから、5代目のRSコスワースまで、その特徴は受け継がれてきました。速いフォードにとりつかれた1人が集めた、壮観な5台をご紹介しましょう。
エスコートRSとしてMk5は最後の本物
1986年になると、シリーズ2のエスコートRSターボが登場。ロードマナーが改善され、コンペティション・マシンというより、一般道が軸のホットハッチ的性格が強くなった。
空冷だったターボは水冷式になり、効率を向上。トランスミッションやエンジン制御、クラッチとブレーキなどにも小さな改良が加えられている。メカニカルABSも、このタイミングで導入された。
インテリアを覗くと、Mk1やMk2を彷彿とさせるメーターパネルがお出迎え。身体をしっかり支えてくれるレカロ製シートは、その時代っぽい明るいグレーのベロア素材で包まれている。
3代目のRS 1600iと同様に、CVHユニットが奏でるサウンドはつまらない。だがロードベースのハッチバックとして、RSターボの性格は良くまとまっている。特に中回転域で、ギャレット製ターボがブーストを高めた時のダッシュ力が爽快だ。
3代目RS 1600iから4代目RSターボの進化は小さかったが、1992年に登場したMk5のエスコートRSコスワースはMk4からの大きな飛躍だった。エスコートに与えられたラリー・スポーツとしては、最後の本物といえる。
当時は、ほかにフォード・シエラとシエラ・サファイアにもコスワース仕様が存在し、稀有なトリオを構成していた。ゲイリー・ボールが所有する5台にも、Mk5のエスコートRSコスワースが含まれている。
6代目エスコートではRS 2000が登場している。だが平凡な152psに留まった。
エスコートのボディにシエラのエンジン
5代目エスコートのコンパクトなボディに、一回り大きいシエラのドライブレインを詰め込む発想が生まれたのは1988年。プロトタイプでの成功を受け、量産化が決定。設計は英国ダントンのフォード・スペシャル・ビークル・エンジニアリング(SVE)が進めた。
量産版RSコスワースは、400か所以上の変更を受けることになり、ドイツのカルマン社へ生産を委託。シエラのフロアパンを短縮し、シエラ・サファイアのエンジンと駆動系を結合。エンジン横置きのFFから、縦置きの四輪駆動へ作り変えられた。
スタイリングも大幅に手が加えれ、ベースのエスコートとの結びつきは感じられるものの、共通するボディ部分はルーフとドア、ピラー回りのみ。特に多くの注目を集めたのが、巨大なリアの2段ウイングだろう。
このウイングは最高速度を6km/hほど落としたが、調整式のフロントスプリッターと合わせて空力性能を大幅に改善。エスコートRSコスワースは、大量生産モデルとして初めてダウンフォースを生み出した。
Mk1やMk2と同様、RSコスワースはラリーのトップカテゴリーでの戦いが運命づけられていた。ホモロゲーション獲得のために、当初RSコスワースは2500台が製造されている。
ボールが所有する初期のRSコスワースには、ウェーバー・マレリ製の燃料系統と点火系統、巨大なギャレット製ターボが載る。競技での利用許可を得るため、ダミーのウオーター・インジェクションを備える例もあったという。