【ラリーウエポン5台揃い踏み】フォード・エスコート ツインカムからRSコスワースまで 後編
公開 : 2020.12.27 20:25
現代的なパフォーマンスの5代目
小型ターボになった1995年のRSコスワースよりエンジンは扱いにくいが、ターボが大きい方がチューニングはしやすい。フォードのコレクションとしても、魅力は大きい。
キーをひねれば、エスコートRSコスワースへ即座に引き込まれる。一般道での走りは、ボールの5台のコレクションの中で、1つ頭が出たように先進的。現代的なパフォーマンスを備える。
低速域では、大きなターボを積んだ1990年代のモデルらしい性格。明確なターボラグとタービン音を放つ、オールドスクールなタイプ。でもアクセルペダルを蹴飛ばせば、すべてが一変する。
一呼吸をおいて、ヒューンという高音の唸りを伴って、頭がヘッドレストに押し付けられる。フロントガラスに付いた雨は、あっという間にルーフ側へ流れていく。
現代で、当時のコスワースが意図した通りのドライブ体験が味わえるエスコートは珍しい。「特に何もしていません。今の走行距離は4万8000kmくらいですが、わたしが購入したときは3万km程度でした」。
「近年の価値の急騰を知り、最近はほとんど乗らなくなりました。完璧なオリジナル状態なんです」。と説明するボール。
多くの自動車ファンにとって、自身のコレクションから一番好きなクルマを選ぶということは、一番好きな子供を選ぶようなもの。即答できないし、選びにくい。
コアな自動車ファンが釣り上げる価格
初代から5代目まで、すべてのフォード・エスコートは同じではない。3代目のRS 1600iと4代目のRSターボは似ているとはいえ、各世代が並ぶ眺めは壮観だ。
スタイリングや走行性能、ドライビング体験などを総じて考えると、筆者は4代目へ食指が動いてしまう。一番若いMk5のコスワースも良い。過去の伝説に並ぶ存在感があり、若いクルマ好きにも受け入れられそうだ。
多くのフォード・ファンにとっては、Mk2のRS 1800が選りすぐりの1台となるだろう。希少性と才気あふれる動的性能で、これまで聖杯のごとく崇められてきた。近年の価値は天井知らずだが、ボールは日常的にRS 1800に乗っているらしい。
信じられないほどの人気の高まりで、価格の上昇を迎えている高性能なエスコートたち。過去に叶わなかった思いを追体験しようとする、コアな自動車ファンがその流れを加速させている。
5台をコレクションする、ゲイリー・ボールもその一員。「わたしが初めて買ったフォード・エスコートは、1986年に手に入れたMk1のメキシコ仕様。それからエスコート・ツインカムを初めて買い、さらに4台が加わりました」
「このコレクションに仕上げるまで、20年ほどを費やしています。かなり長い時間を費やしました。自分にとって最も意味のある存在が、このクルマたちなんです」。ボールがエスコートを手放す日は、当面来ないだろう。