【FCV(燃料電池車)】なぜ普及が進まない? 2代目トヨタ・ミライで3度目の正直 死の谷を越えるか?
公開 : 2020.12.10 18:56 更新 : 2021.01.28 18:23
燃料電池車 日本では福岡県が主導権
カリフォルニア・フューエル・シェル・パートナーシップ(CaFCP)という団体が、同州都のサクラメント市内にある。
その施設に自動車メーカー各社が試作車や量産車を持ち込み、キャラバンを組むように公道実験をおこなった。
また、メディアや一般向けの試乗会やシンポジウムを定期的におこない、燃料電池車の社会需要性について幅広い議論が進んだ。
再び日本に目を向けると、福岡県と九州大学が音頭を取り「福岡水素エネルギー戦略会議」が始まった。
九州大学・伊都キャンパス(福岡県福岡市西区)では、国際的な水素研究がおこなわれ、燃料電池についても自動車メーカー各社が研究拠点を学内に設けた。
また、公共交通ではトヨタと日野自動車が2001年から「FCHV・バス」の共同開発を始め、2005年には愛・地球博で運用された。
こうした2000年代前半から中盤過ぎが、第一普及チャレンジ期だった。
次の、第二普及チャレンジは2015年に起こる。
政府が2014年4月11日に閣議決定した「エネルギー基本計画」に基づき、水素社会の実現構想を掲げ、2015年を「水素元年」と銘打った。
2015年1月には、実用燃料電池車第1号納車式として、安倍晋三総理がミライに試乗し「いよいよ、水素時代の幕開けだと思います。出足もいいし、静かで、本当に快適でした。全省庁で導入したい」と感想を述べた。
電動化シフト一気に「死の谷」越え?
こうして見てきたように、2000年代から2020年にかけて、日本政府は世界の中でも最も強く燃料電池車の普及を後押ししてきた。
だが、いまだに一般ユーザーにとって燃料電池車は「手の届かない乗り物」という印象が色濃く残っていると思う。
価格を見れば、2代目ミライは税込みで700万円台が中心で、117万3000円もの購入補助金など優遇額合計は約140万円に及び、実質的には600万円台となり、上級「アルファード」やレクサスの中級モデルと同レベルになる。
それでもユーザーが燃料電池車購入に対して、一歩前に踏み出すことをためらう最大の理由は、水素ステーションが少ないことだろう。
充填時間が数分であり、また航続距離は初代モデル比で約30%も延長した850km(Gグレード)を実現したといい、EVに比べると2代目ミライの理論上の利便性は高い。
だが、水素ステーションは未だに、東京から西方向の太平洋側の都市圏に集中しており、移動の際には計画的な充填を心掛ける必要がある。
菅政権が進める2050年カーボンニュートラルに向けて、「2030年前半(または半ば)でのガソリン車(内燃機関車)販売禁止」の正式発表がまじかに迫ったいまこそ、水素ステーションのさらなる拡充が求められる。