【お手頃ドライバーズカーを選ぶ】ゴルフGTIxシビック・タイプRxフィエスタSTxGRヤリス BBDC 2020(3)

公開 : 2021.01.03 21:45  更新 : 2021.05.18 16:14

2020年の英国で、一番運転が楽しいドライバーズカーを決める、英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)。まずは同時開催の、お手頃ドライバーズカーの審査から。勝者の1台は、BBDC 2020の審査へ加わります。

タイプRは例外的に良いドライバーズカー

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、登場から時間の経つホンダシビック・タイプRより、乗り心地で優れないという点も悩ましい。今回のタイプRはパイロットスポーツ・カップ2タイヤを履き、エアコンや防音材などが省かれた、サーキット仕様なのに。

「例外的に良い、ドライバーズカーですね」。と目を大きくして、マット・ソーンダースがタイプRリミテッド・エディションのドアを開く。

ホンダ・シビック・タイプR GT(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR GT(英国仕様)

「運転姿勢に操作系の配置、ポルシェ911 GT3並みのフィードバックと正確性、高速域での姿勢制御。すべてが正解に思えます」

ポルシェの技術者が、手頃な価格で前輪駆動のホットハッチを開発するなら、おそらくシビック・タイプRのような走りに仕立てるだろう。それほどまでに、研ぎ澄まされている。

シビック・タイプRはステアリングの操舵感も素晴らしく、求めだけのレスポンスと、欲しいだけの手のひらへのフィードバックがある。ステアリングだけでなく、アクセルとブレーキのペダル操作へ息を合わせるように、即座に正確に反応し美しく旋回する。

ミシュランが充分に温まっていないと、ホイールスピンやトルクステアが生じるものの、すぐに温まって強力なグリップが得られる。トリッキーな路面でもダンパーが巧みに処理し、ボディを乱すことはない。

ホンダ製のVTEC4気筒エンジンは、病みつきになる勢いで回転する。6速MTは改良が加えられ、変速フィールも一層秀逸。前輪駆動のホットハッチに、これより良いMTはないと断言していい。

目玉が飛び出るほどエキサイティング

タイプRの不満を上げるなら、ボディサイズ。ファミリー・ハッチバックとしては少々大きい。リミテッド・エディションの99.9%の能力を秘めた標準のタイプRが、6000ポンド(81万円)も安く手に入る、という事実にも触れないわけにはいかないだろう。

シビック・タイプRに対する小言は、この程度。もしホンダで納得できないなら、今年はトヨタがいる。しかも、ヤリスだという点が面白い。

トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)
トヨタGRヤリス・サーキットパッケージ(英国仕様)

GRヤリスは、モータースポーツのホモロゲーション目的で生まれたわけではないらしい。痛快な楽しみのためだけに、特別な四輪駆動システムを開発したのだろうか。それなら、トヨタと仲良くできそうだ。

確かにヤリスに3万3495ポンド(452万円)は高い。でも中身を考えれば、ほとんど利益はないだろう。

大きく膨らんだフェンダーライン以外、一見するとGRヤリスは普通のハッチバックに見える。着座位置は少し高め。インテリアの眺めも、いつもと同じ。

スターターボタンを押して、3気筒ターボエンジンが目を覚ます。レブカウンターを見てアイドリングしているのか確認したくなるほど、静かな寝起きに拍子抜けする。

アクセルペダルを踏み込む。そのエキサイティングぶりに、目玉が飛び出るほど驚いた。小さなボディサイズに四輪駆動のトラクション、回転数を高めるほど強力になるエンジンの組み合わせで、胸がすくほどに速い。

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