【2020年のドライバー・ベストを決める】32回目の英国ベスト・ドライバーズカー選手権 決勝9台を一気に評価 BBDC 2020(4)
公開 : 2021.01.04 05:45 更新 : 2021.05.18 16:14
対象的な911ターボSとウラカン・エボ
一方で、少しやり過ぎ感もあった。「電子レンジのないプロ用キッチンで、素人が料理をしている感じです。一般道では、制限されている印象が常にあります」。と、マット・プライヤー。でも彼がサーキットの習熟走行に選んだのは、650psの911ターボSだった。
マット・ソーンダースの評価はいい。「大雨に降られても、グリップやスタビリティを失うことはなありません。操縦の余裕を常に残し、限界領域でもコミュニケーションが取りやすい。サーキットでは挙動が漸進的で、運転に惹き込まれますね」
「むしろ天候が悪化するほど、クルマに対する自信が高まります」。と感想を話すジェームス・ディスデイルに、多くが賛同していた。一方で、「心からは興奮できませんでした。わたしが選ぶ可能性が一番低い、911ですね」。というプライヤーの意見にもうなずける。
素晴らしいことは間違いない。でも、愛を感じるほどではなかった。
ポルシェ911ターボSのアプローチは、後輪駆動のランボルギーニ・ウラカン・エボとは真逆だったともいえる。去年のBBDCにノミネートした四輪駆動のウラカンは、結果が振るわなかったのだが。
「昨年のウラカンとは異なり、後輪駆動のウラカンはサンターガタの面目躍如。ステアリング、シャシーバランス、フロントタイヤの反応など、すべてが四輪駆動版より直感的で挙動も予想しやすいです」。とサイモン・デイビスが称える。
フェラーリF8トリブートは途中退場
一方で、優れない視界やドライビングポジションなど、人間工学的な部分での不満は少なくない。サスペンションの減衰力特性も、マクラーレン765 LTには及ばなかった。
ウラカンは、一般道ではしなやかさに欠け、起伏の多いカースル・クーム・サーキットでは良い印象を与えてくれなかった。ウラカン・ペルフォルマンテのサスペンションが組まれていれば、上位に食い込めた可能性はある。
さて、同じイタリア勢として写真には残っているフェラーリF8トリブート。事前の写真撮影では快調に走っていたのだが、審査員による比較試乗の前に機械的な故障が発生。評価せずに姿を消している。
意外だったのが、アストン マーティン・ヴァンテージ・ロードスター。審査員のうち2名が、一般道よりサーキットの方が楽しく感じたという。
ワイルドな雰囲気と、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボは、誰もが好きになるはず。「ポテンシャルの60%程度の良い領域を掴めば、楽しい時間を過ごせます。息苦しいほどの太いトルクと、高回転域で雄叫びを上げるエンジンは素晴らしい」
「手応えの濃いステアリングと、強力なフロントタイヤのグリップも、確実な走りを支えています。大きなボディにも関わらず、狙った場所にヴァンテージを進めていけますね」。マット・プライヤーが笑顔で降りてくる。
その反面、コンバーチブルとしての車体構造が、能力に制限をかけている。乗り心地もわずかに悪化し、ボディサイズや車重を意識させられてしまうことは確かだ。
この続きは(5)にて。