【上位3台からベストを決定】GRヤリスxアトム4x765 LT 異種格闘技 一番のドライバーズカーを選出 BBDC 2020(6)
公開 : 2021.01.05 05:45 更新 : 2021.05.18 16:14
過去にないほど積極的なコーナリング
サーキットでのアクセル操作に対する安定性には、もう少しの向上も求めてしまう。サイモン・デイビスが付け加える。
「ハンドリングでは、ドライバーの調整しろが欠けている印象です。しかし、ひどく濡れた路面でもドライのように激しく運転できる。とても好きになりました」
「フィーリングや充足感の濃さでは、ホットハッチのベストとまではいえないでしょう。でも、運転すれば笑顔にならずにはいられません」。と頬を緩めるのは、ジェームス・ディスデイル。
筆者はアクセルオン時の安定性と、アクセルオフ時の操縦性との、自由度のミックス具合が気に入った。コーナーへ侵入し、ノーズをタイトに内側に巻き込んで、アクセル操作でコーナリング姿勢を作っていける。
バランスは秀逸で、コーナー出口でアクセルを踏み込めば、再び加速する準備は整う感じなほど。でも、残りの2台と5点のビハインドが付くだけの差は、間違いなくあった。トヨタGRヤリスは214点で、3位となった。
マクラーレン765 LTには、圧倒的なドラマとスピードが存在していた。「ロケットの先端に乗っている感覚。こんなことは、マクラーレンでは初めてです。ターンインは過去にないほど積極的で、グリップも目覚ましい」。と表現するマット・プライヤー。
サイモン・デイビスは、「一体感に長けていて、一般道ペースでも極上のドライビングが楽しめます。ステアリングホイールと対話するように、50km/hでも200km/hでも姿勢を操れますね」。とハンドリングの魅力に言及する。
不気味なほどしなやかな姿勢制御
765 LTのオイルのように粘るステアリングの操舵感は、タイトコーナーで巨大な自信をドライバーに与えてくれる。ブレーキング時のグリップレベルの変化も、手にとるように伝わってくる。
フェラーリのような、わかりやすい楽しさは薄いかもしれない。でもF8トリブートは、水浸しの路面でマクラーレンと同等の安定した走りはできなかっただろう。事実、今回はフェラーリの途中退場に納得しない審査員はいなかった。
そしてアリエル・アトム4。晴天時のドライブしか想定していないように、雨風をしのげるボディはない。765psのスーパーカーと同点でBBDCのトップを再び掴むとは、誰が予想しただろうか。
「コンディションを打ち負かせるだけの感触やトラクション、旋回性能を備えていました。しかも、いつもの感覚に近い安心感すら伴っています。素晴らしいクルマです」。と称えるアンドリュー・フランケル。
ジェームス・ディスデイルも、昨年のBBDC2019での体験と重なる走りに興奮を隠せない。「素晴らしい懐の深さです。完璧なアナログ体験といえますね」。一般道では、あまりにしなやかな姿勢制御に不気味さすら感じたという。筆者も理解できる。
見事、マクラーレン765 LTとアリエル・アトム4は、219点の同点でトップに並んだ。徹底的に走り込み、コーナーを攻め、ストレートを飛ばした。アトム4が2度目の勝利をもぎ取るのか、765 LTが2020年のチャンピオンに躍り出るのか。
ベストに選ばれるのは1台のみ。もし審査員の1人が、違う1点をつけていれば、結果は違っていた。果たして、2020年の勝者はどちらになるのか・・。
2020年の英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)の決定は(7)にて。