【ご注意を】ガソリン車、新車販売禁止の「混乱」 安易に乗っからず「落ち着いて」 電動化あらゆる手段 一方…
公開 : 2020.12.14 05:45 更新 : 2022.03.24 21:24
自動車メーカーの目標に対する現在地
国内では政権交代を迎える中、国際論調や環境投資の活発化、米国での政権交代を見据えながら、菅首相の所信表明演説にそれが織り込まれたのは10月末のこと。
結果的に米国がバイデン政権となり、脱炭素化が世界的な既定路線となりつつある中で、後ろ向きのレッテルを貼られないように、というデリケートなタイミングだったことはこちらにも伝わってくる。
そのカーボンニュートラル化へのロードマップのいち要素となるのが報道の件となるわけだが、そもそもこの目標は日本の自動車メーカーにとって、無理筋どころか既定路線でもある。
数えるほどしかEVが販売されていない現時点でさえ、日本の乗用車市場においてハイブリッドを筆頭とした電動化車の販売比率は約4割に達しており、日産やホンダにおいては5割をゆうに超えている。
また、直近の1〜2年においてはディーゼルの急速な逆風に晒された欧州市場でもハイブリッドの存在感は高まっている。
こういった市況を踏まえてトヨタは全世界販売台数の半分強にあたる550万台を電動化車とする年間販売目標達成を30年から25年に前倒ししているほどだ。
加えて、現状のハイブリッドモデルの環境性能は、既に30年のCAFE(企業別平均燃費基準)規制クリアを見据えたものとなっている。
電動化に向けあらゆる手 一方で……
たとえば20年に投入されたヤリス・ハイブリッドは、公称/実燃費ともにもはや他メーカーの追随は不可能かと思わせる領域にいる。
石炭火力発電比率の高い電力構成のエリアであれば、WtoWでみてもLCAでみても、BEVと同等以上のCO2排出量に到達しているはずだ。
しかもその性能は求められれば世界のどの地域でも現状のインフラで発揮できる。
テスラのようなBEV専業メーカーを除けば、各国CAFE規制の達成率や電動車の普及目標に関して、最も慌てる必要がないのが日本の主要自動車メーカーだと言い切ってもいいだろう。
が、他の追従を許さないということは勝敗の論法を変えることにも繋がるわけで、ディーゼルの屋台骨が揺らいだEUは、偏った優遇措置を盾にPHEVの推進に乗り出した。
当然その向こうにはBEVがあり、欧州自工会のイニシアチブを握るドイツの向こうには、利害が一致する中国の自動車産業がある。
ゲームチェンジではなくルールチェンジで試合のの主導権を握るのは、何もクルマの環境性能競争だけではないことはご存知のとおりだ。
30年半ばに純内燃機車の販売をストップする。
これは政治家が簡単にポピュリズムを煽り自らの糧にするための道具ではない。省庁間を横断する国益にまつわる競争の一端だということだ。
そしてバイデン政権の誕生で流れはいよいよ固まった。
トヨタ・アライアンス、日産三菱そしてホンダは、満を持して電動化に向けてあらゆる手を講じていく段階に入ったといえる。
が、それでも日本のメーカーが内燃機関の効率向上の手を緩めることはないだろう。
なぜなら、それなくしてコストや航続距離と言ったモビリティの基本価値を満たすには、まだ膨大な時間を要するからだ。
パワートレインのベストアンサーは1つではないと、トヨタが機会あるごとに繰り返し発言していることを、影響力のあるメディアの方々は、もう一度リマインドした方がよろしいかと思う。