【ジウジアーロでFFのロータリー】976台のマツダ・ルーチェ・ロータリークーペ R130 後編
公開 : 2021.01.02 20:25
ジウジアーロのスタイリングをまとう、ロータリーエンジンを搭載した前輪駆動のクーペ。イタリア車にも見えるほど美しい、マツダ車です。わずか3年、976台でで製造終了となった、ルーチェ・ロータリークーペをご紹介しましょう。
もくじ
ーパワーウインドウに8トラックのステレオ
ー控えめなアンダーステアとボディロール
ーとても滑らかで甘い回転フィーリング
ー主役になれなかったロータリークーペ
ーマツダ・ルーチェ・ロータリークーペ R130(1969〜1972年)のスペック
パワーウインドウに8トラックのステレオ
マツダ・ルーチェ・ロータリークーペのインテリアには、ヨーロッパな世界観が広がっている。グラスエリアが大きく、車内は開放的。トランスミッション・トンネルの大きな峰もなく、空間にはゆとりがある。設えも豪奢だ。
特にこのR130のトリムグレードは、スーバーデラックス。かなり高価なクルマだった。全面パワーウインドウに加え、エアコンに8トラックのステレオも付いている。つや消しのメタルプレートが、ダッシュボードで鈍く光る。
肉厚のシートは、落ち着いたブラウンのツイード張り。当時の仕様としては一般的なものだった。荷室も大きい。まっとうなグランドツアラーという印象を強める。
リアシートも充分に広く、ちゃんと使用する前提でデザインされている。ヘッドレストやグラブハンドル、ゆったりとしたアームレストが備わる。フロントシートの背もたれ裏には、灰皿も付いている。
シートベルトは、後に追加された装備。センターピラーのないクリーンな見た目に、小さくない影響を与えている。フロントフェンダーに据えられた、日本の大きなミラーも美しい調和を乱すようだ。
フロントシートのサイズは大きく、座り心地は良い。ステアリングホイールは3スポーク。それぞれにクラクションのボタンが付いていて、これもアルファ・ロメオっぽい。
エンジンをスタートさせ、R130を前へ進める。予想していたミラノ的な走りは、いい意味で裏切られた。まったく違う。
控えめなアンダーステアとボディロール
パワーステアリングのアシスト量は強く、ブレーキのサーボも効きが強すぎる。マツダが掲げる人馬一体は、まだこの頃は達成できていないらしい。
しかし、運転する時間が長くなるほど、ルーチェ・ロータリークーペを信頼できるようになる。ドライバーとクルマとが、結びついてくる。
旋回時の優れた安定性やロードホールディング性、エンジンと4速マニュアルの質量によるトラクションなどを考え、前輪駆動を選んだのだろう。それでいてロータリーエンジンは小型・軽量で、FF車にありがちなアンダーステアを回避できている。
ドライブトレインの搭載位置は、エンジンルームの下方。重心位置は低い。
これらが組み合わさって、サスペンションはしなやかでありながら、ボディロールは想像以上に小さい。 15インチの185/65という、現代基準では細いタイヤ4本に、しっかり荷重を載せていける。
フロントタイヤからステアリングホイールへ伝わるフィードバックは、ほとんどない。それでもロータリークーペのバランスの良さを掴めれば、不安感なくコーナーへ侵入していける。確かなグリップ力で、安心感を伴って運転できる。
タイトコーナーの出口でアクセルペダルを踏み込んでも、タイヤはスキール音をたてない。低回転域では、トルクが控えめだという理由もある。ロータリーエンジンの特徴でもある。