【ジウジアーロでFFのロータリー】976台のマツダ・ルーチェ・ロータリークーペ R130 後編
公開 : 2021.01.02 20:25
とても滑らかで甘い回転フィーリング
ルーチェ・ロータリークーペ、R130が搭載するツインローターの13A型ユニットの排気量は、その数字が示すとおり1310cc。655ccの大きさのローターが2つ組み合わされている。自然吸気で、パワーデリバリーはとてもリニアだ。
ロータリーエンジンの父と称される山本健一率いる技術者チームによって、最高出力ではなく、最大トルクに振ったチューニングを施してある。大きな振動を発することなく、シンプルにタービンのように回転する。
17.5kg-mの最大トルクは3500rpmで発生し、扱いやすい。最高出力は、5000rpmで125psを発揮する。1960年代後半のグランドツアラーとしては、アンダーパワーというわけではなかった。
エンジンの回転フィーリングは、とても滑らかで甘い。同じく自然な特性を備えるシャシーを活かすように、ストロークの長いシフトレバーを積極的に前後させて運転した方が、ルーチェ・ロータリークーペを楽しめる。
しっかりアクセルペダルを踏んであげれば、スピードメーターの200km/hへ針をヒットさせることも可能。0-400m加速も、16.9秒と悪くない。
それでいて、120km/hでの巡航時は、4000rpmをわずかに下回る。防音性も高く、車内は静かに保たれ、リラックスした運転に浸ることも難しくない。スポーツカーというより、スポーティ止まりだが、現代の2車線道路も気持ちよく流せる。
主役になれなかったロータリークーペ
おそらくこの穏やかな性格こそ、R130がマツダの当時の主役になれなかった理由の1つだろう。コスモスポーツS110のように、多くのドライバーのハートを掴むことはできなかった。
穏やかな革命児ともいえる、ルーチェ・ロータリークーペ。イタリアンなスタイリングとドイツのロータリー技術を融合させ、日本のマツダが美しいクルマに仕上げられることを証明した貴重な1台だ。4ドアサルーンのロータリーモデル、NSU Ro80のように。
今こうして試乗すると、R130ルーチェ・ロータリークーペが英国も含めて、欧州へ入って来なかったことが残念でならない。2020年のマツダ100周年も、もっと大勢でお祝いできただろう。マツダというブランドが、歴史あるものだと広く認知されていたに違いない。
マツダ・ルーチェ・ロータリークーペ R130(1969〜1972年)のスペック
価格:新車時 175万円/現在 7万ポンド(945万円)以下
生産台数:976台
全長:4585mm
全幅:1635mm
全高:1390mm
最高速度:191km/h
0-97km/h加速:8.3秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1285kg
パワートレイン:ツインローター1310cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:125ps/6000rpm
最大トルク:17.5kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル