【詳細データテスト】ザ・グッドイヤー・ブリンプ 快適至極な空の旅 ファミリーカーの街乗りより静か 飛行機より船に近い乗り心地

公開 : 2020.12.19 20:25  更新 : 2021.03.05 21:27

クリスマスシーズンは希少なマシンをテストするのが恒例の英国編集部。今年は巨大な飛行船に乗ってきました。地上ではなじみのないメカニズムや用語に困惑しつつも、滅多に味わえない空の旅にすっかり魅了されたようです。

はじめに

乗客が酔うとしても、それは飛行機酔いより船酔いのような状態かもしれない。今回、クリスマススペシャルとして地上を離れ行うロードテスト 、そのターゲットを操るパイロットのひとり、ケイト・ボードはそう語る。

それはまさに空飛ぶ船だ。ツェッペリン製の飛行船、LZ N07-101というのが機種の正式名称だが、ブルーとイエローの特徴的なカラーリングを纏ったこれは、ザ・グッドイヤー・ブリンプの名で親しまれている。夏の間だけだが、ほぼ10年ぶりに欧州の空へ舞い戻ってきたそれは、宣伝飛行を行った。

テスト対象:ザ・グッドイヤー・ブリンプ(ツェッペリンLZ N07-101)
テスト対象:ザ・グッドイヤー・ブリンプ(ツェッペリンLZ N07-101)    OLGUN KORDAL

これに乗るには、飛行機酔よりも船酔いの耐性が必要になりそうだ。それには飛行船特有の性質が関係しているのだが、それは追々説明することにしよう。また、ときに空気より軽い船であるかのように語られることもあるが、このツェッペリンNT(ニューテクノロジーの意味だ)の最新モデルに関していえば、それは正確な表現ではない。

このドイツのメーカーは、長年にわたり休眠していた有名な名前に起源がある。オリジナルのツェッペリンは、巨大飛行船の建造と運用を行い、ヒンデンブルク号とグラーフ・ツェッペリン号は2日半ほどで大西洋を横断。これは1930年代、この航路を最短で結ぶ手段だった。ツェッペリンのエックハルト・ブロイアーCEOは「当時のプライベートジェットといったところですよ」と形容する。

ツェッペリンはかつてグッドイヤーと共同事業を構えたこともあるが、それも飛行船需要が非常に大きかったので、世界唯一のヘリウム生産国だったアメリカからヘリウムを買い入れなければならなかったからだ。

しかし、アメリカは、その貴重な資源を自国でも必要としていた。そのため、ツェッペリンがヒンデンブルク号を水素ガスで飛ばさざるを得なかったのは不運だった。1937年の爆発炎上事故は世界ではじめてテレビで放映された工業的な惨事であり、突如として飛行船離れが起きた大きな理由でもある。

やがてジェットエンジンが開発されると、飛行船の命運は断たれたが、ツェッペリン社は存続した。欧州最大のキャタピラー社ディーラーや、ツェッペリン飛行専用の歯車メーカーとして創業されたZF社などを傘下に置き、やがて飛行船を復活させるための信託ファンドも設けた。

そのときは1997年に訪れた。ツェッペリンの名を持つ新たな飛行船のプロトタイプが空に浮かんだのだ。それ以来、改良が重ねられ、いまや単なるマーケティングツールや空飛ぶビーコンの域を超えたものとなった。

1930年代と同じく飛行船設計の中心地であるフリードリヒスハーフェンで製造されたLZ N07-101は、すばらしく、ほかにないほど使いやすい航空機だ。

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