【詳細データテスト】ザ・グッドイヤー・ブリンプ 快適至極な空の旅 ファミリーカーの街乗りより静か 飛行機より船に近い乗り心地
公開 : 2020.12.19 20:25 更新 : 2021.03.05 21:27
パフォーマンス/ハンドリング ★★★★★★★★★★
このツェッペリンは商用飛行船なので、1分あたりの上昇高度は1000フィート(約306m)、下降高度は1200フィート(約365m)が求められるが、これほど大きなマシンとしては十分レスポンシブだといえる。
速度はそれほど速くない。最高速度は126km/hだが、エンジンを2800rpmまで回してそのスピードを出せば、航続距離が最大値の998kmからダウンすることは避けられない。
もっとも、フリードリヒスハーフェンからル・マンへ向かったわれわれのフライトは2000rpmほどで流し、巡航時の対気速度がだいたい33ノット(約61.1km/h)。このスピードは、風向きによって変化する。追い風を捉えれば、対地速度はその倍にまで達した。
やがてわかるのは、誰かが手をばたつかせて起こるような風でも、飛行船の方向決めには大きな影響を及ぼすことだ。対地速度が80km/hを切っても、この世の終わりというわけではない。単に、前へ進めないだけだ。
けれども、驚くほど耐久力があり、本領を発揮するのは観覧や科学調査の足場としてだ。南アフリカまで飛び、2年をかけて地形を問わず磁気を測定し、ダイヤモンド採掘に最適な地点を探した機体もある。
直線的な巡航時に消費する燃料は、時間あたりおよそ40kgだが、イベント会場の上空を周遊するような場合はそれより少なくて済む。航空燃料の搭載量は825kgなので、22時間は飛び続けられることになる。そのため、連続稼働時間は燃料消費量より、パイロットが勤務し続けられる時間に左右される。
それでも、燃料の減りは飛行船を飛ばす上で気に留めておかなければならない。浮力に影響を及ぼすからだ。ゴンドラのフロア下には、700kgの貯水タンクが設置されている。パイロットは離陸前にそのプラグを開けて、飛び立つのに最適な重量になるよう調節する。
ところが、帰還時には燃料を消費した分だけ機体が軽くなっているので、風の強さにもよるが、着陸はすんなり重力に従って高度を落とせる場合と、動力を介入させなければならない場合とが出てくる。ヘリウムを放出するという手段もあるが、やむをえない状況にならない限りそれは避けたいので、選択肢は基本的にふたつだ。
一般的な飛行時には、物事はもう少し穏やかに進む。気嚢のレベルは自動的に調整される。ル・マンの標高はフリードリヒスハーフェンより低いが、10時間にわたる飛行中、空気の放出に気づいたのは2回だけだった。
また、エンジンスピードをいったん設定したら、パイロットはもっぱら操縦桿に掛かりきり。船体が右へ左へ穏やかに向きを変えたり、上昇気流を突っ切る際に上下動したりするのに合わせて調整を行う。
絶え間なく流されたりふわついたりしているのを感じていると、飛んでいるというより航海をしているように思えてくる。客席にいる限りは、すばらしくリラックスして過ごせるのだ。