【ハレとケの見事なバランス】フォルクスワーゲン・ゴルフRへ試乗 8代目 320ps+四輪駆動 後編

公開 : 2020.12.25 18:25

Rのエンブレムに320psと四輪駆動が与えられた、最もパワフルなゴルフ。動的性能と快適性とが高次元で見事にバランスし、フラッグシップ・ハッチバックにふさわしいとする英国編集部。スタッドレスタイヤでの試乗となりました。

たくましくレスポンスに優れる最新EA888

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
最新のゴルフRにはローンチコントロールも付き、レースモードで解き放てば、爆発するようにダッシュする。センターデフが反応するまでの瞬間にフロントタイヤが空転するものの、タイヤ4本を活用し、みなぎるトルクは路面へ効果的に伝わる。

第4世代として改良を受けたEA888ユニットは、低回転域でのレスポンスが鋭くなった印象。2000rpm以下から自然にターボのブースト圧が高まり、たくましいトルクを引き出せる。6700rpmのリミッターに当たるまで、軽快に吹け上がることも特徴だ。

フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)

一番積極的なドライブモードへの切り替えは簡単。ステアリングホイールのスポークに追加されたRボタンを押すだけで、エンジンやステアリング、駆動系統、ダンパーなどを最も攻めた状態に設定できる。ゴルフRの反応は、一層ダイレクトになる。

動作が改善された7速DSGも、エンジンと良いパートナーを組んでいる。特にシフトダウン側で、従来より滑らかで素早い変速を実現している。

メカニズムや路面から伝わる感触も、従来より高められたようだ。走る道に関係なくゴルフGTIより刺激的で、運転にのめり込めるだろう。

1つ気になったのが、可変レシオのステアリング。非常に正確でセルフセンタリングが強く、コミュニケーション力も高いのだが、低速域では軽すぎるように感じた。自信が得られるような適度な重さが加われば、ドライビング体験はさらに印象深いものになる。

アンダーステアもボディロールも一掃

全体的に見直されたシャシー設定のおかげで、アンダーステアはほぼ消えている。トルクベクタリング・システムの役割が大きくなる、スタッドレスタイヤを履いていても。

タイトコーナーでフロントタイヤのトラクションを感じつつ、ゴルフRはアクセル操作でのライン調整が取りやすい。クルマと一体になって熱い走りを楽しめる。秀逸な姿勢制御が、抜群のグリップ力を引き出している。

フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフR(欧州仕様)

ただし積極的なコーナリングを試みると、ビークル・ダイナミックマネージャー、VDMシステムに一瞬のためらいが生じるようだ。ダンパーの設定が最適な状態に切り替わるまでに、わずかな時間差を感取できる。

コーナーで攻め込んでもボディロールは抑え込まれ、ノーズダイブやピッチングなども見事に制御されている。この落ち着きこそ、新しいゴルフRのパフォーマンスを定義するもの。従来より滑らかでありながら、機敏な身のこなしを両立させている。

乗り心地も向上している。先代では舗装の傷んだ区間では車内が乱されることもあったが、最新のRでは最もホットな設定でも、充分なしなやかさが残されている。過去にないほど、日常的な身近さを感じられるゴルフRといえる。

今回の試乗では、ゴルフRは筆者の期待を超えるドライビング体験を与えてくれた。メルセデスAMG A 45には並ばないものの、間違いなく速い。アウディS3やBMW M135i、メルセデスAMG A 35の好敵手となるだろう。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事